道具幕(読み)ドウグマク

デジタル大辞泉 「道具幕」の意味・読み・例文・類語

どうぐ‐まく〔ダウグ‐〕【道具幕】

歌舞伎大道具で、引き幕の内側につり、開幕直後や舞台転換のつなぎなどに用いる幕。山・波などが描かれる。

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精選版 日本国語大辞典 「道具幕」の意味・読み・例文・類語

どうぐ‐まく ダウグ‥【道具幕】

〘名〙 歌舞伎の大道具で、本幕引幕)の内側につり、これに山・波・雲・網代(あじろべい)などを描いた幕。開幕直後や、舞台転換の間のつなぎに用い、この前でちょっとした芝居をしたり、または大薩摩を演奏したりしてから、その幕をいっせいに振り落とすか、引栓(ひきせん)で順々に振り落とす。
※歌舞伎・暫(1714)「本舞台一面廻廊の道具幕、紅白梅の釣枝

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道具幕」の意味・わかりやすい解説

道具幕
どうぐまく

歌舞伎大道具の用語。浪幕,山幕,霞幕や町家,野原街道の遠見幕,網代 (あじろ) 塀を描いた網代幕など,演出上必要な背景としての幕の総称。いずれも本舞台を見せる前段として,舞台転換の効果を上げるために用いられた。よりシンボリックに扱われるものに,浅黄幕黒幕がある。浅黄は昼,黒は闇の空間を意味する。日覆からつるした「振り竹」という竹竿から垂らした幕を「切って落す」「振り落す」場合と,逆にその場面をおおい隠すために,あらかじめ「振り竹」に幕を巻きつけておいて「振りかぶせる」場合とがある。

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世界大百科事典(旧版)内の道具幕の言及

【歌舞伎】より

…美濃(みの)紙,絵絹などを使う。 道具幕(どうぐまく)大道具。舞台前面に吊り下げる幕で,山,浪,網代(あじろ)塀,野原などの絵をかいたもの。…

【幕】より

… また歌舞伎では,大道具が生まれる以前から,さまざまな世界(抽象空間)を示すための背景の幕が使われていた。闇夜であることを示す〈黒幕〉をはじめ,〈浪幕〉〈山幕〉〈網代(あじろ)幕〉などの各種の道具幕,また〈浅葱(あさぎ)幕〉などがそれである。さらには,歌舞伎興行のシンボルとしての〈櫓(やぐら)幕()〉の存在も興味深いし,初期の歌舞伎では入口の鼠(ねずみ)木戸(入口が小さく,しきいが高く,人が鼠のようにして出入りするのでこの名でよばれた)のところに幕がかかげられ,入場者の側もいわばこの幕をくぐることにより,はじめて芸能の場に参加する〈資格〉が与えられるのであった。…

※「道具幕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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