家庭医学館 「過眠症/ナルコレプシー」の解説
かみんしょうなるこれぷしー【過眠症/ナルコレプシー Hypersomnias/Narcolepsy】
睡眠覚醒障害(すいみんかくせいしょうがい)(コラム「睡眠覚醒障害」)の1つで、睡眠が過剰となるものです。
また、過眠症のなかで、とくに病態がよくわかっているものにナルコレプシー(居眠(いねむ)り病)があります。
[症状]
過眠症には、昼間の眠けが強く、よく居眠りをする、あるいは夜間の睡眠が長く、朝なかなか起きられないなどの症状があります。なお、夜は不眠がみられ、昼間は眠けが強い場合のように、不眠症と過眠症は必ずしも対立するものではありません。
ナルコレプシーの基本的症状は、第1に、日中の強い眠けによる居眠りや睡眠発作(すいみんほっさ)、第2に情動脱力発作(じょうどうだつりょくほっさ)です。
睡眠発作とは、重要な会議中や試験中などの緊張すべき場面でも、発作性に数分間から十数分間寝てしまうものです。
情動脱力発作は、情動をきっかけとして、随意筋(ずいいきん)(自分の意思で動かせる、手足の筋肉など)の脱力が突然生ずるものです。
そのほかにナルコレプシーの症状として入眠時幻覚(にゅうみんじげんかく)と睡眠(すいみん)まひがあります。入眠時幻覚は、寝入るときに出現する、生々(なまなま)しい現実感と感情をともなう鮮明な夢の体験です。睡眠まひは、いわゆる金縛(かなしば)り(コラム「レム睡眠とノンレム睡眠」)のことです。
[原因]
不眠症と同様に過眠症も、一次性と二次性のものに分けられます。
原因のはっきりしないものを一次性過眠症と呼びます。二次性過眠症には、物理的環境因子、化学物質、心の病気、神経の病気、その他のからだの病気によるものなどがあります。
ナルコレプシーにも、原因のはっきりしない一次性のものと、頭部外傷、脳炎(のうえん)、脳腫瘍(のうしゅよう)などによる二次性のものがあります。
ナルコレプシーの過眠は、覚醒維持機能の低下により生ずるとされています。また、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠まひは、レム睡眠(コラム「レム睡眠とノンレム睡眠」)の異常により生ずると考えられています。
[検査]
過眠症の検査として、脳波検査、睡眠ポリグラフィ(コラム「睡眠ポリグラフィ」)、睡眠潜時反復検査(すいみんせんじはんぷくけんさ)などがあります。
睡眠潜時反復検査とは、2時間ごとに入眠させて、睡眠に至る時間を測定し、眠けを評価するものです。
ナルコレプシーの睡眠ポリグラフィでは、著しい入眠傾向、入眠後10分以内にレム睡眠が出現するといった特徴がみられます。
[治療]
まず、原因の明白な過眠症に対しては、原因の除去を行ないます。他の睡眠覚醒障害をともなう場合は、その治療も行ないます。
ナルコレプシーの眠けの治療には、塩酸メチルフェニデート(商品名リタリン)などの精神刺激薬が有効です。脱力発作、入眠時幻覚、睡眠まひなどのレム関連症状には、塩酸クロミプラミン(アナフラニール)などの抗うつ薬が有効です。これらの薬物は、その他の過眠症に対しても有効な場合があります。