運送契約(読み)ウンソウケイヤク

デジタル大辞泉 「運送契約」の意味・読み・例文・類語

うんそう‐けいやく【運送契約】

運送人旅客または貨物運送することを約束し、旅客または荷送人はその運賃を支払うことを約束する契約。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「運送契約」の意味・読み・例文・類語

うんそう‐けいやく【運送契約】

〘名〙 当事者の一方(運送人)が物品または旅客を運送することを約し、相手方がこれに対して、運送賃を支払うことを約する契約。
商法(明治三二年)(1899)三四三条「運送契約に因りて生じたる荷送人の権利━」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「運送契約」の意味・わかりやすい解説

運送契約 (うんそうけいやく)

運送人が物品または人の運送を引き受け,運送の依頼人がこれに対して運送賃を支払うことを目的とする契約。これを締結して運送を引き受ける行為は,営業としてなされることにより商行為となる(運送営業)。運送営業は,商品取引の空間的障害を超克する役割を果たしている。運送営業は,陸上海上航空運送営業に区別される。商法典は,陸上(湖川港湾を含む)運送を第3編〈商行為〉第8章〈運送営業〉で規整し,海上運送を第4編〈海商〉で特別に規整している。海上物品運送については,内航船の場合と外航船(船積港または陸揚港が本邦外にあるもの)の場合との2本立てになっており,前者は商法典第4編〈海商〉で,後者国際海上物品運送法(1957公布)で規整している。航空運送については,行政的監督法規として航空法(1952公布)があるが,特別の私法法規は制定されていない。国際航空に関しては,1929年の〈国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約〉(ワルソー条約。日本は1953年加盟)および同条約を一部改正した55年のハーグ議定書(日本は1967年加盟)が国内法として効力を有している。運送営業は,歴史的には,まず海上運送において発達し,その後陸上運送が続き,航空運送は日が浅いが,今日では重要な地位を占める。

 運送契約は,運送という仕事の完成を目的とするものであるから,それは請負契約(民法632条)に属する。しかし商法の規定は,運送の法律関係をかなり自足的に規定しているので,民法の請負に関する規定が適用される余地はほとんどない。運送契約は,諾成・不要式の契約であって,物品運送における運送状・航空運送状または貨物引換証・航空貨物引換証・船荷証券の作成交付や旅客運送における乗車券・航空券の発行は,契約成立の要件ではないが,実際には方式化の傾向にある。また運送契約は,公衆に対して多数締結される大量取引であるから,普通契約条款や営業規則による取引の方式がとられている(運送約款)。鉄道・軌道・自動車運送事業・旅客定期航路事業では,原則として運送の引受けを拒絶することができず,締約強制となっており,また運送賃等の運送条件については公示義務が課せられ,公的監督が加えられている。

 運送契約において運送を引き受ける者は,運送人である。海上運送では船舶所有者,船舶賃貸人等であるが,包括的名称はない。物品運送契約における運送の委託者は,陸上運送では荷送人であり,海上運送では傭船者(傭船契約の場合)または荷送人(個品運送の場合)である。旅客運送契約の当事者は,運送人と運送の依頼人すなわち通常は旅客自身である。航空運送の場合も,海上運送契約に準じて考えてよい。

 荷受人(目的地で運送品を受け取る者)は,荷送人自身であってもよい。貨物引換証船荷証券が発行されていない場合には,荷受人は,到達地への運送品の到着とともに運送品引渡請求権を取得する(商法583条1項)。貨物引換証や船荷証券が発行されている場合には,運送人に対して運送品の引渡しを請求できる者は,これらの証券の所持人である。ただ,実際界では,これらの証券と引換えでなく運送品を引き渡す場合(仮渡し・保証渡し)が少なくなく,この慣行は,とくに海上運送の場合に多い。
運送人 →海商法
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運送契約」の意味・わかりやすい解説

運送契約
うんそうけいやく
contract of carriage

当事者の一方が物品または旅客の運送を約し,相手側がこれに対して報酬 (運送賃) を支払う旨を約する契約。運送の対象により物品運送と旅客運送に区別され,また運送が行われる地域により陸上運送,海上運送,航空運送に分けられる。いずれも運送という仕事の完成を目的とするから,その法的性質は請負契約である (民法 632) 。しかし陸上運送および海上運送に関して,商法で包括的に規定しているので,民法の請負に関する規定を適用する余地はほとんどない。航空運送については商法に規定がなく,主として国際航空運送に関するワルシャワ条約 (→ワルシャワ国際航空運送条約 ) に依拠した航空運送約款により規律されている。運送業は一般的に公共性が高いため多数の特別法令が制定され,普通取引約款 (→普通契約条款 ) が広く利用されているので,商法の規定が直接適用されることも実際上少い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android