運輸安全委員会(読み)ウンユアンゼンイインカイ

デジタル大辞泉 「運輸安全委員会」の意味・読み・例文・類語

うんゆあんぜん‐いいんかい〔‐ヰヰンクワイ〕【運輸安全委員会】

国土交通省外局の一。航空事故・鉄道事故・船舶事故や重大な運航障害の原因調査・究明し、再発防止、被害軽減に貢献することを目的とする。調査結果にもとづき、必要に応じて国土交通大臣や原因関係者などに事故防止や被害軽減のための措置施策について勧告・建議する。昭和49年(1974)に設置された航空事故調査委員会に、平成13年(2001)調査対象として鉄道事故が加えられ航空・鉄道事故調査委員会となる。平成20年(2008)10月から海難審判庁船員等の懲戒機能を除いた船舶事故の原因究明機能も統合され現組織へと再編された。JTSB(Japan Transport Safety Board)。→エヌ‐ティー‐エス‐ビー(NTSB)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運輸安全委員会」の意味・わかりやすい解説

運輸安全委員会
うんゆあんぜんいいんかい

旧、航空・鉄道事故調査委員会を改組して、国土交通省の外局として2008年(平成20)に設置された委員会。根拠法は「運輸安全委員会設置法」(昭和48年法律第113号)。航空・鉄道・船舶事故等の原因、および、これらの事故等に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を行い、調査結果に基づき、国土交通大臣への必要な施策の実施の勧告や、原因に関係する者に対して必要な措置の実施を勧告する。設置にあたり、旧、海難審判庁の船舶事故の原因究明機能を統合した。航空・鉄道・船舶事故等には、事故が発生するおそれがあると認められる事態(重大インシデント)が含まれる。

 旧、航空・鉄道事故調査委員会が国土交通省の審議会等(国家行政組織法8条)として設置されていたのに対して、運輸安全委員会は原子力規制委員会などと同じく国家行政組織法3条2項に基づく省の外局の委員会として設置されており、国土交通省からの独立性が高められ、行使しうる権限も強化されている。

 委員長および委員12人によって組織され、委員のうち5人は非常勤とされている。委員長と委員は、委員会の事務遂行について科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、国土交通大臣が任命し、罷免についても、原則として委員会の意見を聴いたうえ、両議院の同意を得てなされる。委員会には、専門の事項を調査させるため、学識経験のある者のうちから委員会の意見を聴いて国土交通大臣が任命する非常勤の専門委員を置くことができる。委員会の事務を処理させるため委員会には事務局が置かれ、事務局長、事故調査官、事故防止分析官等の職員が置かれる。また事務局長のもと、全国8か所に地方事故調査官が置かれる。

 事故等の調査では、委員会には関係者に対する報告徴取、出頭要求、質問、立入検査等の権限が認められ、虚偽報告や検査拒否への罰則も用意されている。事故等の調査を終える前に、関係者に意見を述べる機会を与えなければならず、また、旅客運送業での事故等のうち一般的な関心が高いものについては、委員会は関係者や学識経験者の意見聴取会を開催しなければならない。事故等の調査終了後、委員会は、調査の経過、認定した事実、事実を認定した理由を記載した報告書を作成し、国土交通大臣に提出するとともに公表を行う。報告書には少数意見も付記される。委員会は必要があると認めるときは、国土交通大臣に対して施策の勧告、原因に関係する者に講ずべき措置の勧告を行い、関係行政機関に対しても意見提示ができる。

[北見宏介 2022年5月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運輸安全委員会」の意味・わかりやすい解説

運輸安全委員会
うんゆあんぜんいいんかい

航空・鉄道・船舶事故等の原因を究明し,再発防止と被害軽減策を講ずることを目的に設置された委員会。2008年航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁(→海難審判所)の原因究明部門を再編し,国土交通省の外局として設置された。所掌事務は,航空・鉄道・船舶事故等の原因および事故に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を行なうこと,調査結果に基づき事故防止および被害の軽減のために講ずるべき施策や措置について国土交通大臣や原因関係者に勧告することなどである。委員会は,衆参両議院の同意を得て国土交通大臣が任命する委員長および委員 12人(うち 5人は非常勤)で組織され,任期は 3年。委員会のもとに総合部会,航空部会,鉄道部会,海事部会,海事専門部会および事務局が置かれている。

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世界大百科事典(旧版)内の運輸安全委員会の言及

【航空事故】より

…この種の機関で世界最大のものはアメリカのNTSB(National Transportation Safety Boardの略。運輸安全委員会)である。かつての事故調査は,事故機の残骸調査と関係者の証言聴取以外に手段がなく困難をきわめたが,1960年代以降フライトレコーダーおよびボイスレコーダーが実用化されたことにより,比較的正確かつ容易に事故時の状況を把握しうるようになって調査に革新的な変化がもたらされた。…

※「運輸安全委員会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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