運命(幸田露伴の史伝)(読み)うんめい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「運命(幸田露伴の史伝)」の意味・わかりやすい解説

運命(幸田露伴の史伝)
うんめい

幸田露伴(こうだろはん)の史伝。1919年(大正8)『改造』に発表。中国の『明史(みんし)』に取材し、小説的虚構を排して建文(けんぶん)・永楽(えいらく)2帝の生涯を描く。建文帝は太祖(たいそ)の遺命で即位したが、野心家の永楽帝武力によって帝位を追われ、出家して天寿を全うする。他方、永楽帝は国内の治安が乱れて一身の安きこともなく、果ては非業(ひごう)の死を遂げる。露伴明暗の鮮やかな両者の生を対照して、幸・不幸の未来を人知で測るのは不可能で、すべては世の転変を支配する「数」=天命の計らいにあるという固有の運命観・世界観を展開する。事実の厚みと、格調の高い漢文脈の文体とが相まって、個我を超えた時間の永遠性を彷彿(ほうふつ)する傑作。

三好行雄

『福本雅一注解「運命」(『日本近代文学大系6 幸田露伴集』所収・1974・角川書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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