[1] 〘連語〙 (動詞「あそぶ(遊)」の
未然形に、上代の尊敬の
助動詞「す」の付いた語) 狩猟、歌舞、音楽、遊楽などをなさる。お遊びになる。
※古事記(712)中「恐(かしこ)し、我が天皇、猶其の大御琴阿蘇婆勢(アソバセ)〈阿より勢までは音を以ゐよ〉」
[2] 〘他サ五(四)〙
[一] ((一)が一語化した語)
① 詩歌を詠じたり、音楽を奏したりする意の尊敬語。
※大和(947‐957頃)一五一「帝(みかど)、『立田川もみぢみだれてながるめりわたらば錦中や絶えなむ』とぞあそばしたりける」
※平家(13C前)五「御琵琶あそばされけるところに」
② (広く用いて) いろいろの物事をする意の尊敬語。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「かねまさはみさごをつかうまつり、そなたには中島のほどよりにあそばししに、この御鷹は」
※平家(13C前)四「御手跡うつくしうあそばし、御才学すぐれて在(まし)ましければ」
③ (自動詞のように用いて) ある動作をする意の尊敬語。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)四「やり手にも、ずいぶん色をさとられぬやうにあそばしませ」
④ 動詞の前に付いて複合語をつくり、その動作をする人に対する敬意を表わす。
※草根集(1473頃)一「疵を求の世中候得ば、あそはしかへられ候へかし」
[二] 補助動詞として用いられる。多く動作性の語に付いて、その動作をする人に対する尊敬の意を表わす。助動詞「る」「ます」を下につけて敬意を強める場合もある。
(イ) 動作性の名詞につく場合。接頭語「御」のついた漢語である場合が多い。
※義経記(室町中か)五「一先づ落ちさせ給ふべく候か、又討死あそはし候はんか」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「お客様の入らっしゃる度に、此子を御吹聴遊(アソ)ばすさうでござります」
(ロ) 動詞の連用形につく場合。多く、動詞の連用形は、尊敬の接頭語「お」を伴う。
※評判記・難波鉦(1680)五「まづあれへ御かへりあそばしませ」