連濁(読み)れんだく

精選版 日本国語大辞典 「連濁」の意味・読み・例文・類語

れん‐だく【連濁】

〘名〙 二つの語が結合して一語を作るとき、あとの語の語頭清音濁音に変わること。「桜・花」が「さくらばな」、「菊見・月」が「きくみづき」、「経・済」が「けいざい」となる類。連濁音。
語法指南(1889)〈大槻文彦〉仮名 音「濁音、半濁音本濁と、連濁(レンダク)と、の別あり」

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デジタル大辞泉 「連濁」の意味・読み・例文・類語

れん‐だく【連濁】

国語で、合成語の語頭の清音が濁音に変わる現象。「はな」が「さくら」に下接して「さくらばな(桜花)」となる類。その他に「月見酒(つきみざけ:さけ→ざけ)」「経済(けいざい:さい→ざい)」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「連濁」の意味・わかりやすい解説

連濁 (れんだく)

語を複合するとき,下にくる語の清音が濁音にかわること。漢語にあっては,新濁とよばれるものにおなじ。漢語のばあいには,本来,濁音であるばあいを本濁とよび,複合によって,もとは清音であったものが濁音になるばあいを新濁とよぶ。たとえば,〈被害〉の〈ガイ(害)〉のガは本濁,〈三階〉の〈ガイ(階)〉のガは新濁である。漢語のばあいには連濁のおこる条件がかなりはっきりしている。すなわち,カ,サ,タ,ハ行音に韻尾[n][m][ŋ]が先行すると,それぞれガ,ザ,ダ,バ(またはパ)行音に転じるのである。〈両国〉(地名)が〈リョーゴク〉であるのは,〈両〉の〈リョウ〉の〈ウ〉が漢字の韻尾として[ŋ]であるからなのである。しかし〈日米両国〉などというときには,もはや〈リョーコク〉というほうがふつうである。これは連濁の原理が,今日では,もはや生きて働かなくなっていることを示すものである。したがって,その反面,伝統的な語にほど連濁がみとめられる。たとえば〈東宮〉〈東西〉に対し,〈東京〉では連濁がおこらない。また,連濁にしたがっていた読み方も,しだいに失われてきている。

 国語のばあいには,いかなる条件で連濁がおこるか,一般的にいうことは困難である。ただ歴史的にいうと,漢語のばあいと逆に,連濁で発音される形がしだいにふえてきている。そして,現に動揺しているものもある。抽象的にいえば,熟合の度合がたかまったばあいに連濁があらわれるといえよう。以上に対し,連濁のおこらない複合のばあいについては,その条件をあきらかにすることができる。たとえば,〈カゼ(風)〉のように,すでに第2音節が〈ゼ〉とにごる語にあっては,〈ヤマ(山)+カゼ〉も〈ヤマガゼ〉とはならない。それから,山と川,目と鼻,天と地といったぐあいに対等にむすびつく合成語のばあいには,ヤマカワ(ヤマガワでなく),メハナ(メバナでなく),アメツチ(アメヅチでなく)のごとくである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「連濁」の意味・わかりやすい解説

連濁
れんだく

単語が結合した場合に、後項の語頭の清音が濁音化する事象。和語と和語(アオ+ソラ>アオゾラ)、漢語と漢語(精(ショウ)+進(シン)>ショウジン)、漢語と和語(演(エン)+スル>エンズル)の3種がある。和語の場合の連濁がどのような条件下でおこるかは複雑であるが、逆におこらない条件としては、熟合度の低い場合(一語化を完了していない場合)、用言と用言が結合している場合、前項末尾または後項第二音節目が濁音である場合、などが指摘できる。漢語の場合には、平安末期から「新濁(しんだく)」とよばれて、前項末尾が撥音(はつおん)-m,-n,-ŋを有する字の場合の鼻音同化現象としてかなり規則的に発生していたが、今日では連声(れんじょう)と同じく、すでに語彙(ごい)的に固定している。

[沼本克明]

『奥村三雄「字音の新濁について」(京都大学国語国文学研究室編『国語国文』第21巻6号所収・1952)』『中川芳雄「連濁涵精」上下(京都大学国語国文学研究室編『国語国文』第47巻2、3号所収・1978)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「連濁」の意味・わかりやすい解説

連濁
れんだく

複合語の後部形態素の最初のモーラと,それに相当する単独の形態素の最初のモーラとの間にみられる清音濁音の交替という形態音韻論的現象をさす。ハナ~クサバナ,タル~サカダル,カワ~タニガワの,/h/~/b/,/t/~/d/,/k/~/ŋ/(/g/)などがその例。「新濁」ともいい,もともとの濁音である「本濁 (ほんだく) 」と区別することもある。連濁の条件はまだ十分に解明されてはいないが,複合語の前部形態素と後部形態素の音韻的,文法的,意味的関係が少くとも関連していることがわかっている。たとえば後部形態素の第2音節に濁音があるとき (「春霞」〈ハルガスミ〉に対する「春風」〈ハルカゼ〉) ,複合動詞のとき (「着替え」〈キガエ〉に対する「着替える」〈キカエル〉) ,対比的意味を前後にもつ語 (「山川」におけるヤマガワに対するヤマカワ) などは連濁を起さない。

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百科事典マイペディア 「連濁」の意味・わかりやすい解説

連濁【れんだく】

2語が複合して1語となる場合,後続語の語頭の清音濁音化する現象。谷川(たにがわ),信ずる,鉱山(こうざん)など。漢語の場合はカ,サ,タ,ハ行音に韻尾〔n〕〔m〕などが先行すると,それぞれガ,ザ,ダ,バ(またはパ)行音に転ずるのであるが,今日ではこの原理がはたらかなくなっていることもある。日本語において,どんな場合に連濁が起こるかは必ずしも一律にはいいがたく,時代・場所によっても異なることがある。

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