日本大百科全書(ニッポニカ) 「連座制」の意味・わかりやすい解説
連座制
れんざせい
犯罪行為に関係ない者であっても、犯人と特定の関係にあることを理由に刑事上の連帯責任を負わせる制度。このうち、血縁関係を理由に犯人の近親者を処罰することを縁坐(えんざ)、主従などの血縁関係者以外の者にまで刑事責任を及ぼすことを連坐という。
[三橋良士明]
縁坐と連坐
縁坐は、唐律に倣ったもので、大宝律令や養老律令のなかで立法されている。やがて中世に引き継がれ、室町時代、とくにその末期から戦国時代にかけて広く行われるようになった。江戸時代に入り、縁坐の対象は、8代将軍徳川吉宗(よしむね)のころ公事方御定書により、元文(げんぶん)2年(1737)の法令で、親殺しの罪人の子に範囲が狭められた。しかし、武士の場合は依然として広範囲にわたって適用された。
連坐ということばは、中国の秦(しん)時代につくられた制度において、初めて使われた。日本の律(古代における刑法)においては、公坐相連とよばれ、四等官に適用された。近世前期には、一般の犯罪を防止する目的で用いられたが、近代刑法の制定により廃止されるに至った。
連座制の本来の意味である刑事上の連帯責任を問う方式は、個人責任を基本とする近代法制では認められなくなり、一般に、連座制という場合は、選挙法上の連座制を意味する。
[三橋良士明]
選挙法上の連座制
選挙において当選人以外の者が選挙犯罪を犯し刑に処せられたとき、当選人の当選を無効とする制度である。選挙法上の連座制が設けられる理由は、当選人と特定の関係にある者による悪質な選挙違反行為は、当選人の選挙運動全体が不公正であること、その当選が不正な手段によるものであることを推測させるからである。また、公明かつ適正な選挙運動を確保するためにも、厳しくその責任を問うことが妥当であると考えられるからである。
日本の公職選挙法において連座制が適用されて当選無効となるのは、以下の三つの場合である。なお、(1)および(2)の場合には、連座制の効果として当選無効に加え、連座裁判の確定などのときから5年間、当該選挙区で立候補することができなくなる。
(1)選挙運動の総括主宰者、出納責任者、候補者の父母・配偶者・秘書などが買収、利害誘導などの選挙犯罪を犯した場合(同法251条の2)
(2)組織的選挙運動管理者など(公職の候補者と意思を通じて組織的に行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案・調整や、選挙運動員の指揮・監督を行っている者)が買収、利害誘導等の選挙犯罪を犯した場合(同法251条の3)
(3)公務員および独立行政法人等の役職員であった者が、その職を離れた日から3年以内に行われた国政選挙のうち、最初に立候補した選挙で当選した場合に、その者と職務上関係のあった者が所定の選挙犯罪を犯した場合(同法251条の4)
以上の三つの場合に刑事裁判の結果によってただちに当選無効の効果が生じるのではなく、連座制に関する訴訟を経ることが必要である。公職選挙法210条は、当該当選人が検察官を被告として当選無効にならないことの確認を求める訴訟について規定し、同法211条は、連座制の適用により当選人の当選を無効と認める検察官が当選人を被告として高等裁判所に当選無効の訴訟を提起する手続を規定している。
[三橋良士明]