造林(読み)ぞうりん

精選版 日本国語大辞典 「造林」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐りん ザウ‥【造林】

〘名〙 樹木を植えたり、人工林を作ったりすること。また、既成の森林の手入れ、維持管理などを行なうこと。
森林法(明治四〇年)(1907)一一条「造林の命令を受けたる者造林を怠りたるとき」

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デジタル大辞泉 「造林」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐りん〔ザウ‐〕【造林】

[名](スル)木を植え育てて森林をつくること。計画的に木を植える人工造林法と、既成の森林に手入れをする天然造林法とがある。「土砂崩れを防ぐため造林する」
[類語]植樹植林

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改訂新版 世界大百科事典 「造林」の意味・わかりやすい解説

造林 (ぞうりん)

林を仕立て育てること。育林とほぼ同じ意味で使われることもあるが,人工造林とくに苗木の植栽を意味する場合に用いられることが多く,植栽してからの手入れ(保育)や天然更新も含めていることを強調する意味では育林を使うほうがよい。もともと森林がなかった場所や,森林が切られてからかなりの年月がたった場所に林を仕立てる場合afforestationと,森林を伐採したあとにすぐ次の林を仕立てる場合reforestationとあり,後者は更新と呼ぶのが普通であるが,更新を造林と同義に用いる場合もある。なお,経済性の低い林を有用な樹種にかえるための造林を,日本では拡大造林または樹種更改と呼んでいる。

 林の仕立て方は普通,人工造林(または人工更新)と天然更新(または天然造林)に大別されるが,種子による更新,苗木による更新,および萌芽による更新に分けることもできる。天然更新を成功させるにはいろいろな人工的補助手段を組み合わせることが必要であり,とくに天然生の稚樹が十分にない場合には,稚樹が少ない場所に種子を直まきするか,苗木を植えこむなどの人工造林の手法も併用する。逆に人工造林の場合でも近くの林から飛んでくる種子から稚樹が発生することがあり,そういう稚樹をじょうずに活用して林を仕立てる場合もある。実際の造林にあたっては,状況によって両者を適宜に組み合わせることが可能であり,また必要でもある。

 人工造林には,造林予定地に種子を直接まきつける直まき造林(または播種(はしゆ)造林,人工下種),苗木を植えこむ植樹造林植林または人工植栽,植付造林),挿穂を造林予定地に直接さしつける直挿(じかざし)造林などがあるが,もっとも普通に行われるのは植樹造林である。特殊な方法として,幹の下部からでている枝を押し下げて土をかけ根をださせる伏条(ヒバ,スギなど),キリで用いられる分根,タケの地下茎造林などがあり,直挿造林と併せて分殖造林と呼ばれることもある。植樹造林は普通,苗畑で育てた苗木を植え付ける造林法であるが,森林やその近くに自然に育った稚樹を掘りとって用いることもある。後者の苗木を山引(やまびき)苗と呼んでいる。

 植樹造林の手順は,植栽材料の選定,植付本数の決定,苗木の育成,地ごしらえ,植付補植で,このあとに他の造林法にも共通な手入れとして下刈り,つる切り,除伐,枝打ち,間伐がある。(1)植栽材料の選定 造林予定地またはその周辺にもともとある樹種,品種あるいは系統を用いる場合は問題ないが,新しい材料を用いようとする場合には,予定地の環境条件(気候,気象,地形,土壌など)を調べ,それらに最も適したものの中から,仕立てようとする林の目的にかなったものを選定(適地適木)し,林木育種事業で素質,品質が保証された種子または挿穂があればそれらを入手する。(2)植付本数 樹種,品種あるいは系統の特性,林を仕立てる目的,植栽後の保育形式などを考慮してha当りの植栽本数をきめる。多く植えて間伐を繰り返せば良い木を残すことができるし,幹をまっすぐに育てることができるが,苗木代,植付けや間伐に要する経費がかさむことになる。一般にスギは2000~4000本/ha,ヒノキアカマツクロマツは3000~6000本/haの範囲であるが,吉野地方(スギ),尾鷲地方(ヒノキ)では約1万本/haの密植が行われる。広葉樹も密植するほうがよいとされている。(3)苗木の育成 造林用の苗木は苗畑で育成される。実生苗は種子から,挿木苗は挿穂から育てられた苗木で,林地に植え付ける苗木(山行(やまゆき)苗,山出(やまだし)苗)の地上部の高さは30~50cmを目安としている。挿木苗はスギが最も多く,ヒノキ,ヒバ,一部の広葉樹でも用いられている。苗床で育てた苗木を山出しするときには裸根苗となるが,土付きのまま山出しできるように各種の鉢(ポット)で育てる方法もある。また一部の広葉樹では,幹,根を切りつめた根株苗として山出しする方式もある。(4)地ごしらえ 造林予定地は植付けに先立って地ごしらえを行う。植付けや植栽木の生育に邪魔になる雑草木を刈り払い,枯枝などとともに周囲に寄せるか,植付けの列に沿って筋状に整理することである。近年は塩素酸ナトリウム,テトラピオンなどの除草剤がかなり利用されている。(5)植付け ha当りの植栽本数に応じて列の間隔,植付間隔をきめ,適当な穴を掘って苗木を植える。植付時期は春,苗木が生長しはじめる直前(春植え)が最もよいが,秋の生育を終わるころに植える場合(秋植え)もある。寒くて雪の少ない地方では秋植えは避けるべきである。(6)下刈り 造林地は雑草木が繁茂するので,植栽木が草丈を越えるまでの数年間,毎年少なくとも1回7月ころに下刈りを行う。地ごしらえと同じく除草剤も利用される。(7)つる切り つる植物が幹や枝に巻きついたり,樹冠にはいあがって覆いかぶさったりして造林木の生育を妨げるので,下刈りを行わなくなった後も随時切り除いてやる必要がある。(8)除伐 植栽木以外のいわゆる雑木を中心に,必要な場合には植栽木の一部も切りすかす手入れで,捨切りともいう。(9)枝打ち 木の下枝を切り落とす作業で,節(ふし)を少なくし,幹の先細りの度合を少なくするのが目的である。(10)間伐 造林木が生長すると,隣接した木の枝が互いに触れあってせりあいが始まるので,一部の木を抜切りすることが必要になる。この作業を間伐と呼び,切った木は売って収入をあげるのが普通である。

 直まき造林は苗木の養成・運搬・植栽のための経費はかからないが,植樹造林の場合よりも多くの稚樹を育てるのが普通で,種子が余分に要る,発芽しやすいように地面をかき起こす作業が必要である,雑草木の多いところではかえって手入れがたいへんであるなどの弱点があり,日本ではあまり行われないが,北アメリカなど事業的に行われているところもある。直挿造林は,材料と立地条件がそろわないと実行が難しいが,日本ではスギ,ヒバで実例がある。

造林には木材や燃料の生産,治山のような林地の保全,各種の保安林の造成,あるいはまた景観の維持などのいろいろな目的がある。木材として利用する目的で造林する場合,その用途にもよるが,いわゆる早成樹種を熱帯の良好な立地条件で育てると5~10年で収穫することもできるが,温帯から寒帯では早く生長する樹種でも20~30年かかる。また,生長の遅い樹種の大径材を生産しようとすると100年を超えることもあり,樹種や材質にたいする収穫時の市場の好みを造林時に見通すことは難しい。このように造林事業は一般に長期でしかも低利なため投資誘因が弱いが,森林資源を育て,国土を保全するという公共的要因を考慮して,日本でも明治時代の末ころから造林補助金制度が導入された。日本では各種の針葉樹が造林されてきたが,とくにスギ,ヒノキは安定した市場をもち,造林技術も確立されているため,もっとも一般的な造林用樹種とされている。特殊な目的のためには一部の広葉樹もかなり古くから造林されてはきたが,昭和50年代半ばから,優れた材質,または資源量という視点から改めて注目されるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「造林」の意味・わかりやすい解説

造林
ぞうりん

山野に有用な樹種の林を仕立てて管理すること。有用な樹種とは、かならずしも木材生産を目的とするものとは限らない。林を仕立てる場合には、いまある林を伐採して引き続きその跡地に次代の林を仕立てる場合(更新)と、林がない土地に新たに林を仕立てる場合とがある。造林の方法にはいろいろあるが、人間の力で種子や苗木、挿し穂などの造林材料を造林地に定着させて林に育て上げる人工造林の方法と、天然に散布された種子から発芽した稚樹や切り株から発生した萌芽(ほうが/ぼうが)などを利用して林を仕立てる天然更新の方法の二つに大きく区別される。前者を人工林施業、後者を天然生林施業とよぶ(施業とは伐採などを伴う森林の取扱いのこと)。日本では植樹造林をはじめとする人工造林が盛んである。

 人工林施業には植樹造林、直播(じかま)き造林、直挿し造林の方法がある。

(1)植樹造林 植樹造林は苗木を植える方法で、植林あるいは人工植栽ともいう。苗畑で養成した苗木を造林地に植え付けて林を仕立てる方法である。日本では古くから植樹造林が盛んで、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、トドマツ、アカエゾマツなどの針葉樹の人工造林地が多いが、広葉樹の造林地は少ない。

(2)直播き造林 直播き造林(播種(はしゅ)造林)は、目的とする樹種の種子を林地に直接播いて仕立てる方法であり、人工下種(かしゅ)造林ともいう。環境が適していると、発芽した苗が自然の状態で健全に成長し、植樹造林に比べて苗木養成の期間と経費がかからないという利点があるが、多雨気候の日本では雑草木の繁茂が激しく、林地も急傾斜が多くて種子が流れやすく、鳥類やノネズミの食害もあって、直播き造林はほとんど行われない。

(3)直挿し造林 直挿し造林は、造林地に直接挿し穂を挿し付け、不定根を発生させて林に仕立てる方法である。この作業は簡単であるが、発根性のよい樹種や品種と発根に適した光条件や水分条件をもつ林地に限られる。

 種子が自然に落ちて天然更新していくことを生かした造林法や、切り株から萌芽更新していくことを生かした造林法は、天然生林施業とよばれる。

 ここまで説明してきたように、造林とは林を仕立てる作業という意味が強いが、近年は求める森林の機能を高めるために森林に手を加える作業全体をさすようになっている。すなわち造林とは林木の更新から育成の全般にわたる作業をさすものである。また求める機能には木材生産だけではなく、水源涵養(かんよう)機能や生物多様性保全機能なども含まれており、天然林の管理も広い意味で造林に含まれるようになってきている。

 なお、「造林」に似た「育林」という用語もあるが、「育林」は更新の後の下刈りや間伐などの期間を中心にみた場合に使われることが多い。

[蜂屋欣二・藤森隆郎]

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百科事典マイペディア 「造林」の意味・わかりやすい解説

造林【ぞうりん】

有用樹種の林を仕立てること。植樹,播種,さし木などによって林木を造成する人工造林と,天然の実生(みしょう)苗木を育成して森林の成立をはかる天然更新とに分かれる。最も多く行われるのは植樹による人工造林(植林)である。日本のおもな植林樹種はスギ,ヒノキカラマツアカマツクロマツエゾマツトドマツなど針葉樹がほとんどで,広葉樹では用途の広いケヤキや薪炭(しんたん)材のクヌギなどを植え付ける程度。
→関連項目官行造林間伐スギ(杉)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「造林」の意味・わかりやすい解説

造林
ぞうりん
afforestation

有用樹種の林を仕立てることで,広い意味では林地や林木の保護,手入れまで含まれる。天然更新と人工造林とがある。日本では一般に皆伐に伴う造林法として苗木を用いる植樹造林が行われる。植樹造林は樹種,品種など最も適当と思われるものを用いる自由があるが,選択を誤ると失敗する危険も多い。

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世界大百科事典(旧版)内の造林の言及

【分収制林業】より

…スギやヒノキなどの針葉樹用材樹種を主とした部分林のほかに,ウルシ部分林,キリ部分林などが生まれているのも最近の特徴である。分収制林業は部分林として展開していっただけでなく,県行造林(市町村や個人等の所有地に県が植林),市町村行造林(個人や団体等の所有地に市町村が植林)として全国的に行われている。とくに県行造林は公有林野に対する造林政策の一環として明治30年代の後半から広く行われた。…

※「造林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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