通信の秘密(読み)ツウシンノヒミツ

デジタル大辞泉 「通信の秘密」の意味・読み・例文・類語

つうしん‐の‐ひみつ【通信の秘密】

信書電話電信などによる通信当事者以外には知られないこと。日本国憲法は、これを侵してはならないと規定している。信書の秘密。

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精選版 日本国語大辞典 「通信の秘密」の意味・読み・例文・類語

つうしん【通信】 の 秘密(ひみつ)

郵便、電信、電話などによる通信が第三者に知られないこと。日本国憲法保障する基本的人権の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「通信の秘密」の意味・わかりやすい解説

通信の秘密 (つうしんのひみつ)

国民の通信に対する公権力監視,干渉からの自由。古くは,特定人への意思伝達を媒介する文書を意味する〈信書〉の秘密として主張されたが,今日では,媒介物の種類を問わずに,広く〈通信〉の秘密として理解されている。この自由はプライバシーの保護のために認められたものであるから,保護の対象は,通信の内容だけでなく,通信の日時,発信人や受信人の氏名,住所など,内容を察知させる可能性のある外形的事実にも及ぶ。

 この権利は日本国憲法21条2項で保障されているが,もとより内在的制約には服するのであって,例えば犯罪捜査のための郵便物の押収は,憲法35条の令状主義要件を満たせば可能である(刑事訴訟法99,100条)。また,電話盗聴については,アメリカでは裁判官の発行する令状によるものが許容されており,日本にもこれを支持する意見が強いが,電話による会話は郵便物以上に犯罪との関連性を特定することが難しいため,令状の発行基準は一段と厳格であるべきである。なお,電話の発信人の匿名性を悪用して犯罪に利用する誘拐や脅迫などに対処するための逆探知は,現行犯罪捜査の一種であり,令状を必要としない。

 刑法133条の信書開封罪(正当な理由なく封をしてある信書を開けた者は1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられる)や郵便法8,9条,公衆電気通信法4,5条などはこの自由を守るために存在する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「通信の秘密」の意味・わかりやすい解説

通信の秘密
つうしんのひみつ

日本国憲法は、個人の尊厳(13条)を基本原理としつつ、プライバシー、すなわち個人の公開されない私生活に法的な保障を与えているものと解されている(プライバシーの権利)。このプライバシー権の保障にとって、通信の秘密は住居の不可侵とともに重要な意味をもつ。そこで、憲法は「通信の秘密は、これを侵してはならない」と規定する(21条2項後段)。この規定は、信書、電話、電信、会話などあらゆる私人間のコミュニケーションにおけるプライバシーを保護している。したがって、他人の会話を盗み聴きしたり、電話を盗聴器で傍受したり、他人の封書を開いて見るなどの行為は、通信の秘密を侵すものとして禁止される。ところで、通信の秘密の不可侵性が絶対的なものかという点に関して、警察官が犯罪捜査のため盗聴器を使用することが憲法上許されうるかという点につき、捜査目的のため必要な範囲と限度において許されると解した判例がある。さらに1999年(平成11)8月、裁判所の傍受令状があれば、重大犯罪が組織的に実行される場合の犯罪捜査に限り、電話やファクシミリなどの通信を捜査機関が傍受できることを定めたいわゆる通信傍受法が成立した。

[名和鐵郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「通信の秘密」の意味・わかりやすい解説

通信の秘密
つうしんのひみつ

信書の秘密よりも広い概念であって,封書の内容のみならず,開封の書状,葉書などの秘密を含み,さらに電信電話の秘密をも包摂する。日本国憲法の「通信の秘密は,これを侵してはならない」 (21条2項後段) とは,(1) 公権力によって封書を開披されたり,通信の内容や通信の存在自体 (通信の日時や当事者など) に関して調査の対象とされず (積極的知得行為の禁止) ,また (2) 知られてしまった通信に関する情報を漏洩されないこと (漏洩行為の禁止) をいう。通信の秘密の保護のおもな趣旨は,国民のプライバシーを保護することにあるが,同時に表現の自由にとっても重要なかかわり合いをもつことから表現の自由に関する規定中に保障されているものと解される。郵便法の規定などは,この憲法上の保障の趣旨をうけて設けられたものである。

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百科事典マイペディア 「通信の秘密」の意味・わかりやすい解説

通信の秘密【つうしんのひみつ】

私人の手紙・電話など通信の内容,発信受信に関する事項を侵されない自由。日本国憲法第21条はこれを保障し,旧憲法も信書の秘密として保障していた。郵便法,公衆電気通信法でもあつく保護している。ただし一定の手続を経て例外が認められる(刑事訴訟法100条,破産法190条,関税法122条等)。→信書開封罪プライバシー通信傍受法

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