逆髪(読み)さかがみ

精選版 日本国語大辞典 「逆髪」の意味・読み・例文・類語

さか‐がみ【逆髪】

[1] 〘名〙
① さかだった頭髪。また、髪を逆立てたように、上部に引っぱって結うこと。
謡曲歌占(1432頃)「白髪は乱れ逆髪の、雪を散らせるごとくにて」
② 頭髪がさかだったばけもの。
※俳諧・毛吹草(1638)五「さか髪(ガミ)とみゆるは風の柳哉〈吉林〉」
[2] 謡曲「蝉丸」に登場する狂女の名。また、謡曲「蝉丸」の古名

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デジタル大辞泉 「逆髪」の意味・読み・例文・類語

さか‐がみ【逆髪】


逆立った頭髪。
髪を逆立てた化け物
「―と見ゆるは風の柳かな/吉林」〈毛吹草
謡曲「蝉丸せみまる」の主人公である狂女の名。また、謡曲「蝉丸」のこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「逆髪」の意味・わかりやすい解説

逆髪 (さかがみ)

虚構の人名醍醐天皇の第3皇女で,蟬丸の姉宮。生まれながら髪が空に向かって逆立っている異形の女性。逆髪を名とする人物は,謡曲《蟬丸》以前には見当たらない。しかし,謡曲作者の創作ではなく,中世以前に逢坂(おうさか)山周辺に伝承されていた口承説話にもとづいたのではないかと考えられる。盲目の蟬丸が逢坂山の藁屋琵琶を弾じているところへ,姉宮で,逆髪の業のゆえに遺棄されて放浪する逆髪が立ち寄り,薄幸の姉弟がつかのまの奇遇を喜び,なぐさめあい,なごりを惜しみつつ立ち去るというのが,謡曲《蟬丸》の物語である。中世の伝承に,逢坂山関明神には蟬丸の霊と逆髪の霊を併せまつったと説くものがある。逆髪は境界の地を守る〈坂神〉であり,〈サカガミ〉という音通と,畏怖すべき相貌のイメージから生まれ出た女性の名であったと思う。近世に入っては,近松門左衛門作の浄瑠璃《蟬丸》に登場し,さらに歌舞伎の〈蟬丸物〉に,多く男性に転じて〈逆髪皇子〉の名で登場するに至る。
蟬丸
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「逆髪」の解説

逆髪 さかがみ

謡曲や浄瑠璃(じょうるり)の「蝉丸(せみまる)」に登場する女性。
世阿弥(ぜあみ)の謡曲では,醍醐(だいご)天皇の第3皇女で,盲目の皇子蝉丸の姉。生まれながらに髪がさかだち異形だったため,逆髪とよばれた。のち近松門左衛門の浄瑠璃に登場。歌舞伎の「蝉丸物」の多くには,男性に転じて「逆髪皇子」として登場する。

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