逆格子(読み)ギャクコウシ

化学辞典 第2版 「逆格子」の解説

逆格子
ギャクコウシ
reciprocal lattice

結晶によるX線の回折現象.とくに回折の幾何学を系統的に理解するために,P.P. Ewald(1921年)によって導入された概念.基本周期abc空間格子に対し,次式で定義される基本周期 a*b*c* をもつ空間格子をもとの格子(実格子)の逆格子という.

ここで,V( = ab × c)は単位格子の体積,K定数で,1,λ(波長)または2πである.定義より,

aa*bb*cc*K

ab* = … = cb* = 0.
また,hklを整数とするとき,逆格子ベクトル

Hhklha*kb*lc*
格子面(hkl)に垂直であり,

|Hhkl|=K/dhkl
である.ただし,dhkl は面(hkl)の面間隔.逆格子を用いるとラウエ条件は,K = λとしたとき,

Hhklss0S
と書ける.ここで,s0 は入射X線,sは回折X線を表す単位ベクトルで,Sは散乱ベクトルとよばれる.すなわち,図に示すように,面(hkl)の逆格子点PがEwaldの反射球(または回折球)上にあれば,方向に回折X線が生じる.

Cは結晶試料の位置,Oは逆格子の原点である.逆格子と反射球との関係は,結晶と入射X線との関係に対応している.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「逆格子」の意味・わかりやすい解説

逆格子
ぎゃくこうし
reciprocal lattice

空間格子基本ベクトルa1a2a3 としたとき,
を基本ベクトルとする空間格子を逆格子という。逆格子の格子点はもとの空間格子の格子面に対応する。すなわち逆格子の格子点 (hkl) はもとの空間格子の格子面 (hkl) の法線上に原点から 1/d の位置にある ( d は面間隔) 。単純格子底心格子,体心立方格子,面心立方格子の逆格子は,それぞれ単純格子,底心格子,面心立方格子,体心立方格子である。逆格子は結晶によるX線回折や結晶内の電子状態など,結晶内の波動を記述するのに用いられる。

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