追捕(読み)ついぶ

精選版 日本国語大辞典 「追捕」の意味・読み・例文・類語

つい‐ぶ【追捕】

〘名〙 (「ついふ」とも)
① 追いかけて捕えること。官から役人をつかわして、罪人などを追い捕えること。ついほ。ついふく。
※続日本紀‐文武四年(700)一一月乙未「天下盗賊往々而在。遣使追捕」
今昔(1120頃か)二九「祖の家に行て、此の由を云て、追捕せむと為るに」 〔史記‐衡山王伝〕
② 追及してとりあげること。没収すること。うばいとること。ついほ。ついふく。
※高野本平家(13C前)一「資財雑具を追捕(ツイフ)し」
太平記(14C後)一六一粒をも刈り採り、民屋の一をも追捕(ツイフ)したらんずる者をば」

つい‐ほ【追捕】

〘名〙 (「ほ」は「捕」の漢音)
※文明本節用集(室町中)「追捕 ツイホ」
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉三一「追捕(ツイホ)せらるる者の如く」
※平家(13C前)一「其家に乱入し、資財雑具を追捕(ツイホ)〈高良本ルビ〉し」

つい‐ふく【追捕】

〘名〙 (「ついぶく」とも)
① =ついぶ(追捕)①〔色葉字類抄(1177‐81)〕
愚管抄(1220)四「家成が家のかどに下人をたてて前を通られけるに〈略〉ついぶくはしたりけるなり」
※天草本平家(1592)一「tçuifucu(ツイフク) ノ クヮンニン ガ マイッテ シザイ、ザウグ ヲモ ウバイ トリ

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デジタル大辞泉 「追捕」の意味・読み・例文・類語

つい‐ほ【追捕】

[名](スル)
ついぶ(追捕)1」に同じ。
「―せらるる者の如く」〈織田訳・花柳春話
ついぶ(追捕)2」に同じ。
「其の家に乱入し、資財雑具を―し」〈平家・一〉

つい‐ぶ【追捕】

[名](スル)
賊や罪人などを追いかけて捕らえること。ついほ。
奪い取ること。没収すること。ついほ。
「僧坊民屋を―し、財宝をことごとく運び取って後」〈太平記・八〉

つい‐ふく【追捕】

ついぶ(追捕)」に同じ。〈日葡

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普及版 字通 「追捕」の読み・字形・画数・意味

【追捕】ついほ

追い捕らえる。〔漢書、韓延寿伝〕閭里(りより)仟佰(せんぱく)に非常るときは、輒(すなは)ち聞知し、姦人敢て界に入る(な)し。其の始めは煩(はん)なるが(ごと)きも、後、捕の無く、民に楚(すいそ)(鞭)の憂ひ無し。皆之れに安す。

字通「追」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「追捕」の意味・わかりやすい解説

追捕 (ついぶ)

〈ついふく〉〈ついぶく〉〈ついぷく〉とも訓む。本来は,追跡して捕らえることを意味した。律令条文のなかにすでに見える。ここでは〈罪人〉はもちろんのこと,〈囚(しゆ)〉〈征人(せいじん)〉〈防人(さきもり)〉〈衛士(えじ)〉〈仕丁(じちよう)〉など軍事・警察的任務についているものや,〈流(る)〉〈移(い)〉など強制的に居所を移されたものが,その指定された場所から逃亡した場合にも(こういう者を〈亡者〉と総称する)追捕の対象となった。したがって追捕を任務とする特定の官職があったわけではなかったが,やがて大規模な追捕のために臨時的に〈使〉が任命されるようになり,のちさらにこれが常設の官職になった。このような追捕はしばしば逮捕に際して家宅家財の毀損・没収を伴ったので,中世に入ると〈家に乱入し,資財雑具を追捕し,其奴を搦(から)めとて〉(《平家物語》巻一)のように,略奪をも意味するようになった。
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