追出(読み)おいだし

精選版 日本国語大辞典 「追出」の意味・読み・例文・類語

おい‐だし おひ‥【追出】

〘名〙
① 追い出すこと。今いる場所からよそへ追い払うこと。
不在地主(1929)〈小林多喜二〉四「管理人が遠廻しに〈略〉云ってくる━何時でも態のいい追ひ出しを受けてゐた」
② ある特定社会階級から締め出して関係を断ち切ること。追放
※親長卿記‐文明二年(1470)九月八日「右少弁資基朝臣、有子細、自武将追出、可生涯之由」
刑罰の一つ。罪人の財産を没収し、居住する場所から遠くへ追い払うこと。追放。
※松隣夜話(1647頃)下「越後の科人(とがにん)御仕置、一の重科には〈略〉、三番追出」
浮世草子・浮世栄花一代男(1693)一「追出しうち立て諸人帰りし跡にて」
※耳を掻きつつ(1934)〈長谷川伸〉処女上演以来「その次のものは〈略〉同年六月興行の『柄杓酒』だった、これは俗にいふ追ひ出しに据ゑたもので」
⑥ 最終の出番をいう、寄席(よせ)芸人の隠語
⑦ 「おいだし(追出)の鐘」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・二葉の松(1690)「暁鐘(オヒダシ)に撞(つ)き崩さるる里おどり」
⑧ 寺院で夕暮れに鳴らす鐘。入相(いりあい)の鐘。
⑨ 江戸時代、大坂の蔵屋敷で、米切手の所有者が米の蔵出しを請求しないで蔵に置いたまま、規定期限を超過すること。〔草間伊助筆記‐四(1812)〕
※浮世草子・好色小柴垣(1696)五「おゐし様のおいだしがのみたい」

おい‐だ・す おひ‥【追出】

〘他サ五(四)〙
① ある場所から外へ追いやる。追い払って外へ出す。追い払う。
吾妻鏡‐延応元年(1239)七月二六日「早可出居住所
② ある特定の社会、組織仲間家族などの構成員であった者を除外して関係をたち切る。
※応永本論語抄(1420)公冶長「孔文子が大叔疾仁子朝が女を追出させて、我女をやつたぞ」
③ 追い出し薬を使って、こもった病毒を体外に発散させる。

おん‐・でる【追出】

〘自ダ下一〙 (「追い出る」の変化した語) 自分から進んである場所を出る。むりに出される、あるいは、いやいや出るのではないことを強調するいい方。
※人情本・春色恋廼染分解(1860‐65)二「子まであるのを振り捨てて、亭主の留守に里方に罷出(オンデ)て行った人非人(ひとでなし)

おい‐い・ず おひいづ【追出】

〘他ダ下二〙 物を追って外に出す。追い出す。
※書紀(720)欽明五年三月(寛文版訓)「仍りて我が久礼山(むれ)の戍(まもり)を擯出(オヒイデ)て遂に有(たも)つ」

つい‐しゅつ【追出】

〘名〙 追い出すこと。ある地域から放逐すること。追放。
※高野本平家(13C前)八「一味同心して追出(ツイシュツ)すべきよし、の給ひつかはされたりければ」

おい‐いだ・す おひ‥【追出】

〘他サ四〙 物を追って外に出す。追い出す。
※古事記(712)下「其の室(むろ)の人等を追出(おひいだ)して」

おん‐だ・す【追出】

〘他サ五(四)〙 (「おいだす(追出)」の変化した語) 追い出すの俗語的な表現。
※両足院本山谷抄(1500頃)六「鹿をば山でとりまはいて、一方へをんだいて取る者ぞ」

ぼい‐だ・す ぼひ‥【追出】

〘他サ四〙 たたきだす。おいだす。
※浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中「ぼい出してのけさっしゃれ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「追出」の意味・読み・例文・類語

つい‐しゅつ【追出】

[名](スル)追い出すこと。追放。
「かの外法おこなひけるひじりを―せんとしければ」〈平家・一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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