(読み)ほとばしる

精選版 日本国語大辞典 「迸」の意味・読み・例文・類語

ほと‐ばし・る【迸】

〘自ラ五(四)〙 (古くは「ほとはしる」「ほどはしる」「ほどばしる」とも)
① とびあがる。とびはねる。おどりあがる。
書紀(720)継体即位前(前田本訓)「仍て山壑(やまたに)より遁(にけホトハシ)て詣(いま)せる所を知らず」
② 勢いよく飛び散る。たばしる。噴出する。
※漢書楊雄伝天暦二年点(948)「丘を簸あけ巒を跳(ホトハシラ)しめ」

と‐ばしり【迸】

〘名〙
① 水などのとび散るもの。しぶき。飛沫(ひまつ)
※能因本枕(10C終)二〇四「人の歩むにつけてとばしりあげたるいとをかし」
② 無関係のものにまで影響が及ぶこと。わざわいが傍のものにまで及ぶこと。まきぞえ。そばづえ。とばちり。とばっちり。
※談義本・根無草(1763‐69)後「水虎が科のとばしり故に相果し、隅田川龍神の遺骨也」

と‐ばし・る【迸】

〘自ラ四〙 勢いよくとび散る。ほとばしる。たばしる。
※堺本枕(10C終)一九五「みづのふかくはあらぬがさらさらと人のあゆむにつけてなりつつ、とばしりたる、いとをかし」
[語誌]中古和文では、挙例訓点資料、古辞書に見られる程度である。ホトバシルとトバシルは類義語であるが、ホトバシルは上代ではとび上がる意で用いられており、とび散る意は中古に入ってかららしく、トバシルとは本来別の意味だったと思われる。また、トは瀬戸のトで、狭い所を噴き出すの意とも考えられる。

と‐ばっちり【迸】

〘名〙 (「とばしり(迸)」の変化した語) ある人がわざわいを受けたときに、たまたま近くにいたり、少しだけ関係のあった人に、本来受けなくてもいいわざわいの余波が及ぶこと。また、そのわざわい。まきぞえ。そばづえ。とばちり。
歌舞伎・高麗大和皇白浪(1809)三立「どこへ飛(トバ)っちりがかからうも知れぬ」

と‐ばちり【迸】

※歌舞伎・恋慕相撲春顔触(1872)「何か訳があらうともそっちの事の腹立ちで、大道へ打附けた茶碗のとばちり」

と‐ばしる【迸】

〘名〙 (「とばしり(迸)」の変化した語) 勢いよく飛びちった液体。とばっちり。
俳諧・ゆめみ草(1656)春「藤浪のとばしるなれや松の露〈覚玄〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android