辿(読み)たどる

精選版 日本国語大辞典 「辿」の意味・読み・例文・類語

たど・る【辿】

〘他ラ五(四)〙
① 行くえや、ありかなどを捜し求める。尋ね捜す。
古今(905‐914)仮名序「あるは月を思ふとてしるべなき闇にたどれる心心を見たまひて」
② 行くべき道を迷いながら捜す。また、迷って行きなやむ。
※古今(905‐914)秋上・一七七「あまの河あさせしら浪たどりつつわたりはてねばあけぞしにける〈紀友則〉」
正気をなくしたり、気もそぞろになったりした状態で、道をふらふらと歩いていく。茫然自失して歩く。
太平記(14C後)二七「京へ出る人多ければ、其に伴ひて、我が宿坊にたどり来て」
④ 状況、事態、物の筋道などがわからなくなり、解決を求めてあれこれと考え迷う。どうしたらよいのかわからないで迷う。まごまごする。また、途方に暮れる。
※類従本小町集(9C後か)「我が身こそあらぬかとのみたどらるれとふべき人にわすられしより」
⑤ 模索しつつ考える。不十分な情報をたよりに、あれこれ実体を考える。
源氏(1001‐14頃)若紫「あやし。ひが耳にやと、たどるを聞き給ひて」
⑥ 次から次へと筋道に添って深く考える。考えをあれこれと及ぼしていく。考究する。また、せんさくする。
※源氏(1001‐14頃)帚木「ほの心うるも思の外なれど、おさな心地に深くしもたどらず」
⑦ 他人のやっていることを自己流になぞって習い覚える。
※源氏(1001‐14頃)明石「時世のよせ今一きはまさる人には、〈略〉その心むけをたとるべき物なりけり」
⑧ 繰り返し練習する。
※夜の寝覚(1045‐68頃)一「夢にならひし琵琶は、〈略〉たとらるべき調なく」
⑨ 道や川などに沿って進む。
人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初「里ある方へ打連れて、たどり行くこそ頼母しけれ」
⑩ 手がかりになるものを頼って、捜しながら進む。また、順序や筋道を追いながら進む。
※良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉続「何処やら幽(かす)かに記憶を辿るのである」
物事が次第にある方向に進む。「破滅への道をたどる」
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉四「ドイツが〈略〉隆盛の方向をたどり」

たどり【辿】

〘名〙 (動詞「たどる(辿)」の連用形名詞化)
① おぼつかなくたどること。道に迷い、捜し捜ししながら行くこと。
※隆信集(1204頃)雑二「家を出でてみるたに明きよはの月いらむ山路に辿りあらすな」
② いろいろな条件を思いめぐらしながら結論にたどりつくこと。十分に思慮をめぐらして考えること。また、その能力
※源氏(1001‐14頃)常夏「中将の、いとさいへど、心わかきたどり少なさになど、申し給ふも」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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