とどろ・く【轟】
〘自カ五(四)〙
① 音が荒々しく鳴り響く。力強く響きわたる。〔
新撰字鏡(898‐901頃)〕
※
更級日記(1059頃)「その夜雨風、岩もうごく許降りふぶきて、神さへなりてとどろくに」
② 転じて、驚く。驚きさわぐ。
※
大鏡(12C前)五「御
唐衣に、
あきののをぬひものにし、ゑにもかかれたるにやとぞ、めもとどろきて
みたまへし」
③ 広く世に知れわたる。有名になる。
※催馬楽(7C後‐8C)
葦垣「誰か 誰か この事を 親に まうよこし申しし 止々呂介
(トトロケ)る この家 この家の
弟嫁 親に まうよこしけらしも」
※
花間鶯(1887‐88)〈
末広鉄腸〉下「頻りに叫ぶ声の風
(ふ)と耳に入れば、お春はハット胸轟
(トドロ)き」
とどろか・す【轟】
〘他サ五(四)〙
① とどろくようにする。音を大きく鳴り響かせる。
※
今昔(1120頃か)二〇「弓を強く引て射たれば〈略〉谷さまに動
(とどろかし)て迯ぬる音す」
② あまねく世に知らせる。名を広く聞こえさせる。名高くする。
③ 鼓動を激しくする。胸をときめかせる。
※野の花(1901)〈
田山花袋〉二「すらりとした
立姿などが、烈しく
自分の心を轟かした」
とどろき【轟】
〘名〙 (動詞「とどろく(轟)」の連用形の
名詞化)
① 音が荒々しく鳴り響くこと。また、その音。
※俳諧・虚栗(1683)下「飽やことし心と臼の轟と〈
李下〉 世は白波に大根こぐ舟〈
其角〉」
② 胸が激しく動悸を打つこと。鼓動。ときめき。
※家族会議(1935)〈
横光利一〉「
ふくれ上って来る胸の豊かなとどろきをぢっと抑へ」
[
補注]
固有名詞としての
用例は古くからあり、「枕‐六一」に「とどろきの滝は、いかにかしがましくおそろしからん」と見える。
とどろこ・す【轟】
※
古事記(712)上「天の香山の小竹葉
(ささば)を手草
(たぐさ)に結ひて、天の岩屋戸に汙気
(うけ)伏せて蹈み登杼呂許志
(トドロコシ)」
とどろ【轟】
〘副〙 (多く「に」「と」を伴って用いる) 音の力強く鳴り響くさまにいう語。
※万葉(8C後)一四・三三九二「筑波嶺の岩も等杼呂(トドロ)に落つる水世にも絶ゆらにわが思はなくに」
ほ‐め・く【轟】
〘自カ四〙 (「めく」は接尾語) ざわざわとする。さめく。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
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デジタル大辞泉
「轟」の意味・読み・例文・類語
ごう【轟】[漢字項目]
[人名用漢字] [音]ゴウ(ガウ)(慣) [訓]とどろく
車・雷鳴・大砲などの大きな音の形容。また、それが響くこと。「轟音・轟轟・轟然・轟沈」
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轟[温泉] (とどろき)
宮城県北西部,大崎市の旧鳴子町にある温泉。鳴子温泉の北西,荒雄川に沿って11kmほどさかのぼった地にあり,鬼首(おにこうべ)温泉郷の中心をなす。泉源は古湯と新湯に分かれており,古湯は元和年間(1615-24)にはすでに知られていたもので,新湯は嘉永年間(1848-54)に発見されたと伝えられる。泉質は純食塩泉,泉温は80℃。JR陸羽東線鳴子駅(現,鳴子温泉駅)からバスで約20分。鬼首スキー場にも近い。
執筆者:谷沢 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
とどろき【轟】
沖縄の泡盛。原料はタイ米、黒麹。アルコール度数25%。蔵元の「ヘリオス酒造」は昭和36年(1961)創業。所在地は名護市字許田。
出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報
轟
沖縄県、ヘリオス酒造株式会社が製造・販売する泡盛。名称は沖縄本島北部にある「轟の滝」にちなむ。
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世界大百科事典(旧版)内の轟の言及
【鬼首温泉郷】より
…宮城県玉造郡鳴子町に属し,荒雄岳(984m)の西・南麓に,荒雄川に臨んで散在する[轟](とどろき),神滝(みたき),宮沢,吹上,荒湯などの諸温泉の総称。轟温泉(食塩泉,80℃)の古湯は元和年間(1615‐24)ころ,新湯はその後に発見された。…
※「轟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」