輝水鉛鉱(読み)キスイエンコウ(英語表記)molybdenite

デジタル大辞泉 「輝水鉛鉱」の意味・読み・例文・類語

き‐すいえんこう〔‐スイエンクワウ〕【輝水鉛鉱】

モリブデン硫黄からなる鉱物鉛灰色金属光沢があり、極めて軟らかい。六方晶系。ふつう、葉片状鱗片りんぺん結晶集合体をなす。ペグマタイト熱水鉱床中に産し、モリブデンの原鉱

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精選版 日本国語大辞典 「輝水鉛鉱」の意味・読み・例文・類語

き‐すいえんこう ‥スイエンクヮウ【輝水鉛鉱】

〘名〙 モリブデンの硫化鉱物。鉛灰色の金属光沢をもつ。六方晶系の板状葉状、うろこ状結晶の集合体。硬度一~一・五できわめて柔らかく、爪でも傷がつく。ペグマタイト、気成鉱床高温ないし中温の熱水鉱床中などに産する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「輝水鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

輝水鉛鉱
きすいえんこう
molybdenite

モリブデンのもっとも重要な鉱石鉱物。六方型・三方型の2種類の多型が知られている。酸性深成岩中の高温ないし気成鉱脈鉱床、接触交代鉱床スカルン型鉱床)、変成層状マンガン鉱床中などに産し、タングステン、スズ、ビスマス蒼鉛(そうえん))の鉱物、硫化鉱物などとともに石英脈中、スカルン中に出現する。自形は六角板状であるが、微細結晶からなる、いわゆる土壌輝水鉛鉱もある。ただしその一部はMoCSという形の化合物であるらしいことが判明している。また、少量のCu(銅)やFe(鉄)を含む輝水鉛鉱類似相もある。低硬度、劈開(へきかい)などが特徴。非晶質MoS2はヨルディス鉱Jordisiteとよばれる別鉱物。

加藤 昭]


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改訂新版 世界大百科事典 「輝水鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

輝水鉛鉱 (きすいえんこう)
molybdenite

化学組成はMoS2の鉱物で,六方晶系に属し,六角板状または単柱状に結晶するが,ふつう塊状または鱗片(りんぺん)状をなす。{0001}に完全なへき開がある。Moの層が2枚のS層にはさまれているサンドイッチ状の構成単位が,層状に積みかさねられた結晶構造をもっている。層内の結合にくらべて3層構成単位間の結合力がだんぜん弱いことが,へき開の原因である。鉛灰色,金属光沢をもつ。比重4.7,モース硬度1~1.5で軟らかく,紙に緑灰色の条痕を残す。唯一のモリブデン鉱石として採掘利用される。酸性深成~半深成岩体と成因的に関係が深く,その中のペグマタイト~気成脈にスズ,タングステン鉱物とともに産出したり,岩体周辺の接触変成帯にスカルン鉱物とともに産出したりする。日本では,岐阜県恵比寿鉱山,平瀬鉱山が前者に属し,岩手県大川目鉱山が後者に属する例である。斑岩銅鉱床porphyry copper deposit中に産出するものは量的にまとまっており,資源として重要である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「輝水鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

輝水鉛鉱
きすいえんこう
molybdenite

MoS2モリブデンの主要鉱石鉱物。モリブデナイトともいう。六方晶系。柔軟,硬度1~1.5,比重 4.62~4.73。淡鉛灰色。強い金属光沢。劈開{0001}に完全。撓曲性はあるが弾性はない。見かけは石墨にきわめて似ている。底面に平行な板状あるいは短柱状の結晶として産するほか,鱗片状または粒状を呈する。条痕は帯青ないし帯緑黒色。花崗岩に関係した熱水鉱床やペグマタイト中に産する。

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百科事典マイペディア 「輝水鉛鉱」の意味・わかりやすい解説

輝水鉛鉱【きすいえんこう】

脂感のある金属光沢をもつ青みを帯びた鉛灰色鉱物。ただ一つのモリブデン鉱石。組成はMoS2,六方晶系で結晶は葉片状または鱗片状。比重4.7,硬度1〜1.5,へき開片には撓曲(とうきょく)性がある。高温鉱物でペグマタイト,気成鉱床,接触交代鉱床などに産し,米国のクライマックス鉱山が著名。

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