軟着陸(読み)なんちゃくりく(英語表記)soft landing

翻訳|soft landing

精選版 日本国語大辞典 「軟着陸」の意味・読み・例文・類語

なん‐ちゃくりく【軟着陸】

〘名〙 宇宙空間を飛行する物体地球その他天体に、重力に逆らって速度を緩めながら衝撃を避けて静かに着陸すること。ソフトランディング
※墓碑銘二〇〇七年(1963)〈光瀬龍〉「トジは推力不足のまま、カリストへの軟着陸を行うことにした」

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デジタル大辞泉 「軟着陸」の意味・読み・例文・類語

なん‐ちゃくりく【軟着陸】

[名](スル)
宇宙船などが、惑星などの重力に対して、衝撃を受けないように減速しながら着陸すること。ソフトランディング。「月面軟着陸する」
高成長を安定へ導く過程で、不況などを招かないように徐々に成長速度を低下させる経済政策。ソフトランディング。
交渉やもめ事で、無理に言い分を通そうとせず、よく話し合って結論を出すこと。ソフトランディング。「選挙を控え懸案解決に軟着陸をはかる」

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改訂新版 世界大百科事典 「軟着陸」の意味・わかりやすい解説

軟着陸 (なんちゃくりく)
soft landing

月・惑星探査機や宇宙船が,搭載機器や人間の耐えられるような低相対速度で目的の天体に着陸すること。軟着陸することによって,その過程での近接撮影気象観測をはじめ生物探査実験などさまざまな天体上での活動が可能になり,多くの情報を得ることができるようになった。軟着陸の方法は,着陸する天体の条件によって異なったものとなる。例えば,月では大気がないためにロケットエンジンを月面に向けて逆噴射することだけで減速しなければならない。もし,質量が大きく重力の大きい天体に逆噴射だけで軟着陸するとすれば,推力の大きなロケットエンジンが必要となるため軟着陸はむずかしくなる。しかし,月のように小さな天体の場合には小さいロケットエンジンで十分である。アポロの月着陸船もこうして軟着陸している。一方,火星のように大気のある天体では大気を利用することができる。1975年に打ち上げられたアメリカのバイキング1号と2号は,まず火星の大気で減速し,次にパラシュートを開き,さらに着陸の直前にロケットを逆噴射させて軟着陸している。

 月への軟着陸に初めて成功したのはソ連(現ロシア)のルナ9号(1966)で,月面の近接撮影をしている。アメリカも同年にサーベイヤー1号で月に軟着陸し,カラー写真を撮影した。またソ連は,1970年にベネラ(金星)7号で金星に,翌年マルス(火星)3号で火星にそれぞれ軟着陸に成功している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軟着陸」の意味・わかりやすい解説

軟着陸
なんちゃくりく
soft landing

人工衛星や宇宙船,無人探査機などの宇宙機が,地球や月,その他の天体上に安全に着陸すること。激突する場合の硬着陸に対する語。大気のない月や火星に軟着陸するには,逆推進ロケットを噴射して減速するが,地球や金星など大気がある場合は,パラシュートを使うことができる。史上初めて月への軟着陸に成功したのは,1966年1月打上げのソ連のルナ9号。アメリカでは 66年5月のサーベイヤ1号が初めて成功した。

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百科事典マイペディア 「軟着陸」の意味・わかりやすい解説

軟着陸【なんちゃくりく】

月探査機,惑星探査機や宇宙船が地球,月その他の天体に,積載した人員や計器に損傷を与えないよう,速度をゆるめ衝撃を和らげながら着陸すること。大気のないところではロケットの逆噴射により減速し,大気があればパラシュートも利用できる。

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