車輪石(読み)シャリンセキ

デジタル大辞泉 「車輪石」の意味・読み・例文・類語

しゃりん‐せき【車輪石】

古墳時代碧玉へきぎょく製の腕輪宝器弥生時代の貝製腕輪に起源をもつ。

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精選版 日本国語大辞典 「車輪石」の意味・読み・例文・類語

しゃりん‐せき【車輪石】

〘名〙 古墳時代前・中期碧玉製の腕輪の一種楕円形または円形扁平中央に円孔があり、表面放射状彫刻があるので江戸時代にこの名がつけられた。彌生時代カサガイ製の腕飾りの形を碧玉に移したもので、実用品というより宝器として扱われたと推定される。

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改訂新版 世界大百科事典 「車輪石」の意味・わかりやすい解説

車輪石 (しゃりんせき)

古墳時代の碧玉製の腕飾の一種。環体の表面に放射状の彫刻があるので,車輪の輻を連想した江戸時代の収集家の命名が,そのまま現在につづいている。扁平な卵形輪郭をもち,中央に卵形または円形の孔をうがったものを典型とする。長径は10cmから20cmの範囲に大きな変化を示すのに対して,孔の長径はほとんどが5~6cmにとどまっている。弥生時代に小児の腕飾として用いたカサガイ製の貝輪の形を,拡大して碧玉にうつしたもので,表面の文様もカサガイの肋条の形式化であろう。すなわち,V字形またはU字形断面の浅い溝を放射状に配列し,多くはこれに刻線を組み合わせている。分類が厳密さを欠いた時期に,環体の細い円形の石釧(いしくしろ)も車輪石に含めていたので,環体の広い円形の車輪石のほか,鋸歯文などの文様をもつ円形の滑石製品も,広義の車輪石として取り扱っている。表裏両面に放射状の文様をつけた車輪石も少数ながらある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「車輪石」の意味・わかりやすい解説

車輪石
しゃりんせき

日本の古墳時代前期につくられた腕輪形宝器の一種。オオツタノハを加工してつくった貝輪を碧玉(へきぎょく)や緑色凝灰岩などの石材で模したもので、鍬形(くわがた)石や石釧(いしくしろ)と同様に、初期の近畿政権の手によって一元的につくられ、各地の首長に配布されたものと考えられる。

 祖形の貝輪に忠実な形をした古いタイプのものは、外形が卵形で中央に円孔があり、全体が山形に反っている。山になっている側の面に放射状の凹面帯を彫刻しており、稜(りょう)や凹面帯の中央に刻線を施したものもある。しだいに裏面の反りがなくなって平坦(へいたん)なものが現れ、また、外形が円形のものも出現する。九州北部から関東地方という広い分布圏をもつが、古式のものは畿内(きない)を中心にした比較的狭い範囲でしか発見されていない。なお、車輪石という名称は江戸時代につけられたものだが、適切な名とはいえない。

[渡辺貞幸]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「車輪石」の意味・わかりやすい解説

車輪石
しゃりんせき

古墳から発見される碧玉製の腕飾り様の遺物。卵形をし,中央に卵形あるいは円形の孔があり,そこから放射状に線が刻まれ,車の輪のようにみえるので,この名があるが,古墳時代に多く,貝輪を模してつくられたものといわれる。

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百科事典マイペディア 「車輪石」の意味・わかりやすい解説

車輪石【しゃりんせき】

古墳時代にみられる碧玉(へきぎょく)製の腕飾。扁平な卵形ないし楕円形で,中央部に穴があり,放射状の彫刻が施されている。この形状は弥生(やよい)時代のカサガイやオオツタノハ製の貝輪から生まれたと思われる。

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