車寄(読み)くるまよせ

精選版 日本国語大辞典 「車寄」の意味・読み・例文・類語

くるま‐よせ【車寄】

〘名〙
① 貴人の屋敷で、車を寄せて乗り降りするために、建物玄関口に張り出して設けられた部分。古くは東西中門廊の妻戸から出入りした。のちには二条城二の丸書院のように、玄関に当たるものをいう。くるまつき。
堤中納言(11C中‐13C頃)思はぬ方にとまりする少将「御車よせに少将おはして、ものなどの給ふに」
ホテル病院などで、自動車を寄せて乗り降りするために、建物の入り口に設けられた部分。
海辺光景(1959)〈安岡章太郎〉「車寄せのすぐまへに湖水のやうに静かな海がひろがって」

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百科事典マイペディア 「車寄」の意味・わかりやすい解説

車寄【くるまよせ】

殿舎牛車(ぎっしゃ)を寄せて昇降するために廂(ひさし)の屋根を張り出し,下を敷石にした場所をいう。寝殿造に設けられたが,中世末より武家書院造にも普及した。現代では同形の自動車の乗降場所をいう。→ポーチ

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世界大百科事典(旧版)内の車寄の言及

【玄関】より

…玄関と呼ばれていたかどうかはわからないが,同じ形式の建物は1612年(慶長17)に建てられた名古屋城御殿表座敷や《匠明(しようめい)》所収の〈当代屋敷の図〉にも見られる。同じ形式の建物は室町時代末の内裏にもあり,車寄(くるまよせ)と呼ばれていた。公家の宸殿の建築における玄関の源流は,この,内裏の車寄にあると考えられる。…

※「車寄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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