(読み)ひづめ

精選版 日本国語大辞典 「蹄」の意味・読み・例文・類語

ひ‐づめ【蹄】

〘名〙
哺乳類の爪の一種有蹄類長鼻類に特有で、趾末端部の表皮性の角質壁、角質の箱状を呈する部分。〔十巻本和名抄(934頃)〕
浄瑠璃蘆屋道満大内鑑(1734)三「『そこ立ちさらずは蹄(ヒヅメ)にかけん』と乗出す馬の平首に」
② ①のある動物。
※米沢本沙石集(1283)九「山野の蹄(ヒヅメ)江河の鱗(うろくづ)
③ 特に、駿馬(しゅんめ)をいう。
源平盛衰記(14C前)一四「昔周帝は八匹の蹄(ヒツメ)を愛して」

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デジタル大辞泉 「蹄」の意味・読み・例文・類語

ひ‐づめ【×蹄】

哺乳類のうち奇蹄きていの馬・サイや、偶蹄類の牛・鹿・イノシシ長鼻類の象などの足先にある堅い角質つめ
すぐれた馬。駿馬しゅんめ
「八匹の―を愛し」〈盛衰記・一四〉

てい【蹄】[漢字項目]

人名用漢字] [音]テイ(漢) [訓]ひづめ
馬や牛のひづめ。「蹄鉄鉄蹄馬蹄奇蹄目・偶蹄目」
わな。「筌蹄せんてい

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改訂新版 世界大百科事典 「蹄」の意味・わかりやすい解説

蹄 (ひづめ)
hoof

大型の草食哺乳類がもつがんじょうな靴状のつめで,重い体を支えて長距離を走るのに適している。典型的なものはウマ,バク,サイなどの奇蹄類ウシ,カモシカ,シカ,キリン,イノシシなどの偶蹄類に見られるが,ゾウのつめもひづめである。一般の哺乳類の指端にある鉤(かぎ)づめの変わったもので,サルやヒトの扁(ひら)づめの大部分を占める爪壁(そうへき)が,指の端節を取り巻いて円筒状になり,その円筒の底を発達した爪底がふさいで,ちょうど靴をはいたように指の先を完全に包む。爪壁,爪底ともきわめて厚くじょうぶで,とくに爪壁は先端磨滅に応じて成長が早い。鉤づめと扁づめをもったものは,指骨の腹に体重をかけて歩くが,ひづめをもったものは指骨の先端に体重をかけ,つま先で歩く。ヒトを乗せ,あるいは重い車をひくなど,不自然な運動を強いられるウマは,硬い地面を長く歩くと爪壁が過度に擦り減り,ついには出血する。そのため,蹄鉄をつけてひづめを保護する。しかし,蹄鉄をつけていると爪壁が伸びすぎるので,ときどき爪壁を削る必要がある。ラクダのつめも本来はひづめであるが,砂漠の生活に適応して扁づめ状に変形している。
つめ
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百科事典マイペディア 「蹄」の意味・わかりやすい解説

蹄【ひづめ】

有蹄(ゆうてい)類など主として草原をかける大型草食動物に発達する爪(つめ)が変形したもの。爪(そう)板(爪体)が筒状に発達して指の先端をとり囲み,爪掌が底面を構成,後方の肉指は角皮層が発達して丈夫な蹄甲となる。奇蹄類(ウマ,サイ),偶蹄類(ウシ,シカ,ブタ,ヒツジ)のほか,ゾウなどにもある。

蹄【ひずめ】

(ひづめ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蹄」の意味・わかりやすい解説


ひづめ
hoof

哺乳類の有蹄類がもっている爪をいう。爪板 unguisが指を丸く囲んでおり,爪蹠の部分が蹠面をなしている。なお,有蹄類は,蹄をもつ指が1本である奇蹄類 (ウマ,サイなど) と,2本である偶蹄類 (イノシシ,ウシ,ヤギなど) のほか,ゾウ類 (長鼻目) を含む。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【つめ(爪)】より

…ひらづめは齧歯類の前足の第1指にも見られ,ハイラックスのつめもひらづめだといわれる。 ひづめhoof(またはungula)は,かぎづめに似るが爪板が円筒を形成し,その底を爪床がふさぎ,これらで靴のように指骨端節部を完全に包み,原則としてひづめだけを地に着けて歩く。奇蹄類,偶蹄類など,大型の草食動物に見られ,重い体重を支えて硬い地面を走るのに適する。…

【装蹄】より

…ウマのひづめに蹄鉄を装着すること。よく使役するウマはひづめの磨滅が成長を上回るのでひづめの磨滅を防ぐために蹄鉄をつける。…

【つめ(爪)】より

…四肢がある脊椎動物のつめは,表皮性の硬い角質(主成分はケラチン)からなり,両生類では,熱帯アフリカのツメガエルや渓流生のサンショウウオの幼生などにわずかに見られるのみであるが,爬虫類,鳥類,哺乳類ではほとんどつねにみられ,走ったり,木に登ったりする際の滑り止めや,穴を掘る道具として役だつほか,武器にもなる。哺乳類では,機能に応じて特殊化していて,かぎづめ(鉤爪),ひらづめ(扁爪),ひづめ(蹄)の3種類が区別できる。かぎづめclawは鳥類,爬虫類のつめと同様の基本構造をもつ最も普通に見られるつめで,単孔類,有袋類,食虫類,翼手類,齧歯(げつし)類,貧歯類,有鱗類,ウサギ類,食肉類などがこれをもつ。…

※「蹄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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