足羽山(読み)あすわやま

日本歴史地名大系 「足羽山」の解説

足羽山
あすわやま

福井市街西南部の標高一一六・八メートルの独立丘陵で、現在は公園となっている。足羽山とよばれるようになったのは明治以降のことで、古来幾つかの別名があった。「朝倉始末記」は「木田山」と記し、「足羽社記略」には「善住山せんちうやま」「足羽あすは神社馬来田山まきたやま、一ツノ足羽山、又やしろ」とある。天正三年(一五七五)一乗谷から愛宕大権現社が移されてからは、一般に愛宕あたご山とよばれた。

江戸時代、愛宕山上への登り道は石場上いしばかみ町よりの愛宕坂と、清水しみず町からのひやく坂とがあり、両者の合するところに時鐘堂があって、城下や近辺の村々へ時を告げていた。また愛宕大権現社・足羽大明神・羽明はあかり大明神のほか、波着はじやく寺観音や虚空蔵・昌救しようきゆう喜見きみ坊天神などの寺社も甍を並べていた。宝暦一〇年(一七六〇)刊「越州福井愛宕山名跡志」には「古松老杉枝葉をたれ、森々と神さび、諸堂層々と瓦を並べ、雲井に聳ゆる玉塔の光り、木の間にもるゝ華表の朱、近山無双の壮観なり」とあり、またツツジの名所で(「越前国名蹟考」所引「歳中漫録」)景勝の地として親しまれてきた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「足羽山」の意味・わかりやすい解説

足羽山
あすわやま

福井市街の南西部にある第三紀の凝灰岩からなる小丘陵。標高116メートル。この淡緑色の凝灰岩を、採石の中心地名をとって笏谷(しゃくだに)石(越前(えちぜん)石、福井石ともいう)とよんでいる。加工が容易であるため、建築、土木、墓石などの材料に使用されてきた。山上には足羽山古墳群や足羽山公園があり、全山が植物園となって郷土の植物が植えられている。そのほか、福井市自然史博物館足羽神社、平和塔、墓地公園、継体(けいたい)天皇石像などがあり、福井市第一の名所となっている。

[印牧邦雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「足羽山」の意味・わかりやすい解説

足羽山
あすわやま

福井県北部,福井市の市街地南郊にある小丘。標高 117m。福井平野が沈降する以前の一山頂で,凝灰岩から成り,笏谷石 (しゃくだにいし) の名で切出されていた。現在は4万本の花木が植えられ,公園として整備されている。福井市立郷土歴史博物館,福井市自然史博物館,西墓地公園などの施設,足羽神社,藤島神社,笏谷石の継体天皇像,足羽山古墳群などがある。福井平野の眺望もよく,市民の憩いの場となっている。

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