起潮力(読み)きちょうりょく(英語表記)tide generating force

精選版 日本国語大辞典 「起潮力」の意味・読み・例文・類語

きちょう‐りょく キテウ‥【起潮力】

〘名〙 潮の干満を起こす力。ふつう月、太陽引力をさすが、台風などによる力を含めていう場合もある。潮汐(ちょうせき)力。〔日本気象(1956)〕

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デジタル大辞泉 「起潮力」の意味・読み・例文・類語

きちょう‐りょく〔キテウ‐〕【起潮力】

潮汐ちょうせき

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「起潮力」の意味・わかりやすい解説

起潮力
きちょうりょく
tide generating force

月や太陽の引力の方向と大きさが地球上の各地点で少しずつ異なるため、海水の移動や地球の変形が生じ、潮汐(ちょうせき)がおこる。このように他の天体引力の効果によって生じる力を起潮力という。

 地球と月は、共通重心の周りを1恒星月(約27.3日)で1周する円運動をしており、全体として引力と遠心力がつり合っている。遠心力は地球上のどの地点でも同じであるが、月の引力は、その地点と月までの距離の2乗に反比例するので、月に近い地点では大きく、遠い地点では小さい。このため、月の真下では月のほうへ膨らみ、反対の地点では、引力より遠心力が大きいので、月と反対の方向へ膨らむように作用する。中間部ではくぼむようになる。つまり起潮力は、地球をラグビーボール形に変形するように作用している。太陽の場合も、月と同じ理由で地球上に起潮力が生じる。

 起潮力の大きさは、天体の質量に比例し、地球からの距離の3乗に反比例する。太陽は月よりはるかに大きい質量であるが、距離が遠いので、起潮力は月の半分弱(平均で46%)である。その他の天体は、地球からきわめて遠いか、質量が小さいので、起潮力がきわめて小さい。月と太陽の起潮力の大きさは、もっとも大きい地点で、それぞれ53.4センチメートルと24.6センチメートルの潮差に相当する。固体地球の変形は、相応に起潮力につり合っている。しかし、海洋では、海陸分布や海水の慣性などのために、起潮力と潮汐の大きさ・位相は大きくずれており、月が南中した時刻満潮になるとは限らないし、干満がほとんどない所や、潮差が10メートル以上に達する場所がある。

[岡田正実]


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百科事典マイペディア 「起潮力」の意味・わかりやすい解説

起潮力【きちょうりょく】

潮汐(ちょうせき)をひき起こす力。月や太陽が及ぼす引力(正確には地球全体に及ぼす引力を差し引いたもの)。起潮力の大きさはその天体と地球との距離の3乗に反比例するため,月の引力は太陽の引力より弱いが起潮力は月のほうが大きい。月による起潮力は月と地球を結ぶ直線,およびこれに垂直な大円に関して対称的に分布する。月に直面した点では月に向かい,その裏側(月から一番遠い点)では月から遠ざかる。
→関連項目地球潮汐

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海の事典 「起潮力」の解説

起潮力

潮汐を起こす力をいう。月(あるいは太陽)は地球と共に、その共通の重心の周りを公転している。これに伴う遠心力は地球の中心で月の引力と釣合っている。 公転による遠心力は、中心でも地表のどこでも同じであるが、引力は月に近いほど大きい。したがって、月に面した所では引力が遠心力に打ち勝ち、反対の場所 では遠心力が引力に打ち勝って、共に水面を上昇させようとする力が働き、中間の所では水面を下げようとする力が働く。このように起潮力は天体から受ける引 力の場所による差によって生じるもので、引力が天体までの距離の2乗に逆比例するのに対して、起潮力は3乗に逆比例する。 (永田)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「起潮力」の意味・わかりやすい解説

起潮力
きちょうりょく

潮汐力」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の起潮力の言及

【潮汐】より

…それは,月や太陽のような天体の及ぼす万有引力が主要な作用である天文潮汐,気象の変化に伴う気象潮汐,窮極の原因が太陽放射であるとみられる放射潮汐(気象潮汐の一部は放射潮汐ともみられる),その駆動力や発生機構がまだ十分とらえられていない異常潮汐(異常潮位)などを含む。天文潮汐の場合,それを引き起こす作用,すなわち起潮力は,固体地球にも働き,それを変形させる。この現象を地球潮汐という。…

※「起潮力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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