日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤い靴(童話)」の意味・わかりやすい解説
赤い靴(童話)
あかいくつ
De røde Skoe
アンデルセンの童話。『新童話集』第1巻(1845)に収録。はだしで歩かなければならないほど貧しいが、しかしかわいらしい娘が、富裕な未亡人にもらわれて、美しい赤い靴を買ってもらう。娘は靴に魅せられ、虚栄心も満足するが、その靴は、履くと死ぬまで踊り続けなければならないものであった。娘はその靴を履いて踊り歩くうち、自分が神から呪(のろ)われていることに気づき、靴もろとも足首から切り落としてもらって罪を悔い、懺悔(ざんげ)を重ねてようやく許される。娘の虚栄心のこらしめ方にやや嗜虐(しぎゃく)的と思われるところもあるが、彼の作品ではもっとも宗教的気分の濃い作品の一つである。
[山室 静]