質流地禁止令(読み)しちながれちきんしれい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「質流地禁止令」の意味・わかりやすい解説

質流地禁止令
しちながれちきんしれい

江戸幕府が1721年(享保6)12月(一説には翌年4月)に発布した法令元禄(げんろく)期(1688~1704)以降、幕府は一定の条件下で田畑質流れを公認していたが、この施策を、江戸町方の屋敷地についての質地慣行を田畑に適用した誤った措置として撤回、以後田畑の質流れをいっさい禁止するとともに、今後における質地取扱いの方針を定めた。その内容は大略次のとおり。

(1)質流れ禁止の方針に基づき質地手形の書き直しを行う。

(2)質地小作料の上限を貸金の一割半の利積りとし、超過分は損金とする。滞納小作料は、滞納額を一割半の利積りで元金に加え無利子の済崩(なしくずし)とし、元利金の返済しだい質地を請け戻させる。

(3)1717年以後の質流地は、元金を返済し請戻し願いを提出するなら、質流地が質取主の手元にある場合に限り請け戻させる。

(4)今後田畑を質入れし借用する金額は、田畑値段の2割引とする。この法令は、幕府の祖法である田畑永代売買禁止令が質流れによって有名無実化するのを防ごうとするものであったが、質地騒動などの混乱が生じたため23年8月撤回された。

[泉 雅博]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「質流地禁止令」の解説

質流地禁止令
しちながれちきんしれい

江戸中期の土地法令。1722年(享保7)4月6日発令。当時質入れされていた田畑の質流れを禁止する法令。元禄期以来認められてきた質流れによる耕地の移動を禁止し,すでに質入れされた耕地も,元金を返済すれば請戻しができ,17年以後のものならば流地となっていても請け戻すことができるというもの。この結果,混乱が生じ,22年には越後国頸城(くびき)郡下の幕領の村々で,翌年には出羽国村山郡の幕領長瀞(ながとろ)村で質地の無償請戻しを求め,質地騒動とよばれる一揆がおこった。こうした状況のなか,幕府は23年8月,金融が逼迫し,農民が迷惑することが多いとして撤回した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「質流地禁止令」の解説

質流地禁止令
しちながれちきんしれい

江戸中期,質流れの形で田畑が売買されるのを禁じた法令
1722年,8代将軍徳川吉宗が農民層の分解を阻止しようとして出したが,質地騒動がおこったので,'23年撤回した。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

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