資金運用部(読み)しきんうんようぶ

精選版 日本国語大辞典 「資金運用部」の意味・読み・例文・類語

しきんうんよう‐ぶ【資金運用部】

日本銀行に設けられた政府口座の一つ。金融機関としての機能を果たす。昭和二六年(一九五一)制定の資金運用部資金法により大蔵省預金部から改組郵便貯金と政府の各特別会計の預託金を資金として、公債の引受け、国、地方公共団体政府関係機関や重要産業への貸付などに運用される。

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デジタル大辞泉 「資金運用部」の意味・読み・例文・類語

しきん‐うんようぶ【資金運用部】

政府直轄の機関。平成13年(2001)廃止。郵便貯金厚生年金国民年金積立金などの預託を受け、これを原資として国債の引き受け一般会計および特別会計・政府関係機関・公団地方公共団体などへの貸付を主として行った。財政投融資の中心的役割を果たしていた。財政融資資金が継承。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「資金運用部」の意味・わかりやすい解説

資金運用部
しきんうんようぶ

2001年(平成13)まで置かれていた大蔵省(現財務省)の組織。郵便貯金や各種特別会計の準備金および余裕金を資金運用部資金として統合管理し、その運用を図る政府組織であったが、2001年4月廃止となり、その事業は財政融資資金に引き継がれた。

 旧資金運用部は、1885年(明治18)に設置された大蔵省預金部が前身で、1951年(昭和26)に資金運用部資金法が制定され、それに基づいて大蔵省の資金運用部が創設された。資金運用部資金は、国の制度によって、国の信用に基づいて集められた資金であり、2000年(平成12)12月末の時点で、資産総額は439兆6626億円にのぼり、うち保有有価証券期末残高は85兆9558億円、長期国債72兆6823億円(16.5%)、一般会計および特別会計貸付99兆2414億円(22.5%)、政府関係機関貸付116兆0518億円(26.4%)、公団・事業団(特殊法人)等貸付71兆0344億円(16.1%)、地方公共団体貸付69兆5318億円(15.8%)であった。

 2000年度末における資金運用部預託金残高は、427兆8506億円。このうち郵便貯金および郵便振替は247兆0079億円で57.7%を、厚生保険特別会計は131兆5206億円で30.7%を占めた。債券および貸付金の残高は、431兆9407億円であり、このうち債券は85兆9558億円、貸付金は345兆9849億円であった。

 資金運用部特別会計は、資金運用部資金の運用に伴う歳入歳出を一般会計と区分して経理するために設けられていたものであり、歳入とは資金運用部資金の運用利殖金および付属雑収入であり、歳出とは資金運用部預託金の利子、資金運用部資金の運用損失金、運用手数料、事務取扱費等である。

 財政投融資制度は、大蔵省資金運用部が郵便貯金などの資金を全額預かり、資金運用部から特殊法人(公庫や公団など)に融資する制度であった。特殊法人は、この資金を使って高速道路や空港などを建設する大型事業に活用した。これまで特殊法人は、資金運用部から自動的に資金の流入を受けており自主的な資金調達を行う必要がなかったため、市場のチェックを受けることがなく経営が不透明であるといわれてきた。そのため、2001年度に財政投融資の抜本的見直しが行われ、資金運用部は廃止され、その継承組織として財政融資資金が新設された。

[林 正寿]

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改訂新版 世界大百科事典 「資金運用部」の意味・わかりやすい解説

資金運用部 (しきんうんようぶ)

資金運用部資金法によって創設された制度で,資金運用部資金の管理・運用を行う国の金融機構ともいうべきもの。その収入・支出は資金運用部資金特別会計によって経理されている。郵便貯金や厚生年金・国民年金の保険料など国の制度・信用を通じて集まった資金は,資金運用部資金(これを単に資金運用部と表現することもある)として一元的に統合・管理され,公共の利益の増進に寄与するよう運用されている。資金運用部は,このような資金運用部資金の管理運用権限を有する大蔵大臣を長とする一種の国営金融機関と考えることもできる。その資金量は大手都銀をはるかに上回る。

 沿革的には,明治初期の財政制度の確立過程で,1872年(明治5)国の諸積立金準備金として利殖運用のため用いることとされ,76年に定められた〈準備金取扱規則〉において大蔵省国債寮で預金を預かり,これを運用するという仕組みが定められ,これが資金運用部の原型となった。1875年に発足した郵便貯金は,78年より大蔵省に預けられて運用されることとなり,85年には大蔵省預金部が設立された。預金部の資金は,主として国債に運用されたが,明治末期以降,地方公共団体や金融債を通じて産業資金にも運用されることとなった。第2次大戦後の1951年に資金運用部資金法および資金運用部資金特別会計法が制定され,現在の資金運用部がスタートした。現在,資金運用部に預託されている資金は,(1)郵便貯金,(2)厚生年金等公的年金制度の積立金,(3)その他の特別会計の積立金・余裕金である。

 資金運用部資金は,有償の資金であるとともに公共的な資金であるため,〈確実且つ有利な方法〉で運用することにより〈公共の利益の増進に寄与〉せしめることが義務づけられており,国,地方公共団体,公社,公庫,公団等を対象に投融資(財政投融資計画)されている。資金運用部資金のうち,その運用期間が5年以上にわたるものについては,特別会計予算の総則において国会の議決を受けることとなっている。資金運用部資金特別会計の歳入は同資金の運用利殖金と雑収入であり,歳出は預託金利と事務取扱費等であり,この損益面のみが経理されている。この特別会計は独立採算となっており,期間が7年以上の預託金利率と貸付利率が等しくされているので長期的にはおおむね均衡するが,決算上剰余金が生ずれば積み立てられ,反対に不足となれば積立金が取り崩されて補塡(ほてん)される。

 2001年4月より資金運用部特別会計は財政融資資金特別会計と改められ,資金運用部資金は財政融資資金と改称した。郵便貯金,年金積立金の預託義務が廃止され,自主運用が可能となった。
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百科事典マイペディア 「資金運用部」の意味・わかりやすい解説

資金運用部【しきんうんようぶ】

大蔵省預金部(1925年発足)を改組して1951年設置された国営金融機関。資金源は,郵便貯金や厚生年金,国民年金その他の特別会計(簡易生命保険と郵便年金は除く)の積立金および余裕金その他の資金で資金運用部に預託されたもの,ならびに資金運用部特別会計の積立金および余裕金であり,国民大衆の零細な貯蓄性資金がその中心をなす。その運用については,安全で,かつ公共の利益を増進するよう制約され,公債の消化,国・地方公共団体への貸付,政府関係機関・特殊法人への資金供給に限られる。巨額の資金は財政投融資の原資の主体をなす。財政投融資改革の一環として2001年4月資金運用部は廃止され,財政融資資金と改められた。
→関連項目国庫余裕金中小企業金融公庫日本開発銀行日本輸出入銀行農林漁業金融公庫北海道東北開発公庫郵便貯金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「資金運用部」の意味・わかりやすい解説

資金運用部
しきんうんようぶ

資金運用部資金を管理運用した大蔵省の機関。1951年4月,資金運用部資金法に基づき設置され,郵便貯金や年金積立金,各種特別会計から預託された資金をもとに財政投融資を実施した。2001年廃止。1885年5月に制定された預金規則により,預金局預金の出納整理の必要上,国庫勘定中に預金部が設けられたのが起源。1925年に資金の管理運用の適正化のため預金部預金法および大蔵省預金部特別会計法が制定され,預金部の機構面の整備がはかられた。2001年財政投融資制度の改革が行なわれ,資金運用部は廃止,資金運用部資金に代わり財政融資資金が設置された。

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