費禕(読み)ひい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「費禕」の意味・わかりやすい解説

費禕
ひい
(?―253)

中国、三国蜀(しょく)の官僚。字(あざな)は文偉(ぶんい)。江夏(こうか)郡(ぼう)県(河南(かなん)省羅山(らざん)県の北西)の人。劉璋(りゅうしょう)と血縁関係にあったため、荊州(けいしゅう)から迎えられて入蜀していた。劉備(りゅうび)が蜀を建国すると、董允(とういん)とともに太子舎人(たいししゃじん)となり、劉禅(りゅうぜん)の訓導にあたった。諸葛亮(しょかつりょう)(孔明(こうめい))に高く評価され、呉(ご)への使者となり、北伐にも随行した。北伐の際には、魏延(ぎえん)と楊儀(ようぎ)が互いに憎みあっていたが、つねに費禕が両者の仲裁に入っていた。実務能力に秀でた調停型の政治家として、諸葛亮の死後、蒋琬(しょうえん)とともに蜀を支えた。蒋琬の死後も、北伐を焦る姜維(きょうい)には、1万以上の兵を与えなかった。攻めなければ「中原回復(ちゅうげんかいふく)(魏(ぎ)を倒して、中国の中心部を奪い返す)」という国是を見失い、攻めすぎても危険な蜀の対外政策を、抜群のバランス感覚で統制していたのである。のち、魏の降将である郭循(かくじゅん)に刺殺された。以後、姜維の北伐が大規模となる。『三国志演義』に描かれる費禕は、史実とほぼ同じであるが、諸葛亮の北伐には同行しない。

[渡邉義浩]

『渡邉義浩著『「三国志」軍師34選』(PHP文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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