豊楽寺(読み)ぶらくじ

精選版 日本国語大辞典 「豊楽寺」の意味・読み・例文・類語

ぶらく‐じ【豊楽寺】

高知県長岡郡大豊町にある真言宗智山派の寺。山号は大田山。大願院と号する。神亀元年(七二四聖武天皇の勅を奉じて行基が開創したと伝えられる。本尊の薬師如来は、日本三薬師の一つといわれた。柴折薬師

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日本歴史地名大系 「豊楽寺」の解説

豊楽寺
ぶらくじ

[現在地名]大豊町寺内 東寺内

吉野川左岸の山中、字東寺内ひがしてらうちにある。かつて吉野川の寺内渡のあった地から北へ四〇メートルほど登ると大門跡に至り、さらに杉林の中を続く参道を登ると大師堂・通夜堂・鐘楼・薬師堂に至る。古く、境内は方八町あり、鬱蒼とした杉の林に囲まれて多くの院・坊が建っていたといわれるが、現在は一部に残る杉林に往時面影がうかがわれるのみである。真言宗智山派。大田山大願院と号し、本尊は薬師如来。古くから「柴折薬師」の名で知られる。

寺伝によれば聖武天皇の勅願によって行基が開創したといい、「編年紀事略」は「神亀元年行基菩薩自ラ刻スル所ノ薬師釈迦仏ヲ以土佐国長岡郡豊永郷大田山ニ安置ス、大願院豊楽寺是ナリ」と記す。この行基開創伝承はともかく、旧本尊薬師如来(現在は釈迦如来とされる)の胎内銘は仁平元年(一一五一)八月四日付で、多くの結縁者の名とともに「五間四面薬堂造立奉千部法花経読誦書写共千躰尺迦三尊 造立供養如右千(躰)(迦)供養」とみえ、この時薬師堂が造立されたことが知られる。

豊楽寺
ぶらくじ

[現在地名]建部町豊楽寺

福渡ふくわたりの北方、誕生寺たんじようじ川と旭川に囲まれた独立した山の中腹にあり、高野山真言宗、本尊は薬師如来。近世には下神目しもこうめ村、のちに豊楽寺村に属した。寛文一〇年(一六七〇)の豊楽寺由緒書(豊楽寺文書)によれば、和銅二年(七〇九)の開基と伝え、最初静謐山、次いで柏村山と号し、慶安年中(一六四八―五二)より薬王山と号した。元禄一六年(一七〇三)の豊楽寺境内山林町間書上(同文書)では静謐山に復しており、以後そのまま。豊楽寺文書のうち最も古いものは正平七年(一三五二)三月三日の「弓削庄河口村菊元名内畠壱段」の左衛門尉正道遵行状で、中世には守護山名氏・赤松氏をはじめ在地の土豪たちの帰依により栄えたが、日蓮宗への改宗を迫る松田氏の圧力のために退転、荒廃した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊楽寺」の意味・わかりやすい解説

豊楽寺
ぶらくじ

高知県長岡郡大豊(おおとよ)町寺内にある真言(しんごん)宗智山(ちさん)派の寺。大田山大願院豊楽寺薬師堂と号する。本尊は薬師如来(にょらい)。俗に柴折(しばおり)薬師として知られ、日本三大薬師の一つ。724年(神亀1)行基(ぎょうき)の開創と伝えるが詳細は不明である。本堂である薬師堂は国宝に指定され、堂内には本尊薬師如来像、脇侍(きょうじ)に阿弥陀(あみだ)如来像と釈迦(しゃか)如来像(それぞれ国の重要文化財)がある。釈迦像の胎内銘が仁平(にんぺい)元年(1151)とあり、そのころの建立とみられる。境内には行基杖(つえ)かけの杉、腰かけ石などがある。

[眞柴弘宗]


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百科事典マイペディア 「豊楽寺」の意味・わかりやすい解説

豊楽寺【ぶらくじ】

高知県長岡郡大豊町にある真言宗智山派の寺。行基の創建と伝える。薬師堂は平安時代の簡素な建物で,四国最古のもの。1151年の造像銘のある薬師如来座像釈迦如来座像,阿弥陀如来座像の3体が本尊となっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「豊楽寺」の意味・わかりやすい解説

豊楽寺
ぶらくじ

高知県大豊町にある真言宗の寺。薬師堂に安置する薬師,釈迦,阿弥陀像の3体のうち,『釈迦如来像』 (実際は薬師如来像) に仁平1 (1151) 年の銘があり,堂もこのときの建造と考えられる。四国には珍しい平安時代末期の寺で,薬師堂は国宝。

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デジタル大辞泉プラス 「豊楽寺」の解説

豊楽寺(ぶらくじ)

高知県長岡郡大豊町にある寺院。真言宗智山派。山号は大田山、院号は大願院。724年、行基による開創と伝わる。平安時代末期に建立された薬師堂は国宝、本尊の薬師如来像は国の重要文化財に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の豊楽寺の言及

【大豊[町]】より

…町域の大部分は山林で,耕地は少ないが,養蚕を中心に米作,畜産,冷涼野菜の栽培,林業など,農・畜・林の複合経営による産業の振興をめざしている。国宝薬師堂を有する豊楽(ぶらく)寺,旧村名の大杉の起源となった日本一の杉の巨木(特天)がある。【萩原 毅】。…

※「豊楽寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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