諸神本懐集(読み)しょじんほんがいしゅう

精選版 日本国語大辞典 「諸神本懐集」の意味・読み・例文・類語

しょじんほんがいしゅう ショジンホングヮイシフ【諸神本懐集】

真宗典籍。二巻。元亨四年(一三二四)本願寺第三世覚如の長子存覚が空性房了源の求めに応じて、そのころ一般に流布していた同名書物添削を施したものという。本地垂迹説によって一種神祇観を述べたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「諸神本懐集」の意味・わかりやすい解説

諸神本懐集 (しょしんほんかいしゅう)

真宗僧存覚の著した談義本。奥書によると,元亨4年(1324)1月12日,仏光寺了源の要請により,当時流布していた一本を添削して製作したという。その底本は《神本地之事》と考えられている。談義本は〈耳ぢかの聖教〉と呼ばれ,仏教教義を因縁説話などによってわかりやすく解説したもので,門徒の宗教的要求を知る上で貴重な史料となろう。《諸神本懐集》は,親鸞の神祇否定の精神に立つ本願寺教団が,門徒民衆神祇信仰との矛盾を止揚するために製作したものである。内容は3部に分かれ,第1に諸仏諸菩薩が民衆教化のため,かりに神の姿をとった権社をあげ,第2に生霊・死霊等の邪神をまつった実社をあげている。第3に権社神の本懐が,民衆を阿弥陀如来に帰依させ,念仏を勧めるところにあるとしている。本地垂迹思想に立ちながら,諸神,諸菩薩を阿弥陀一仏に集約しようというところに,その論理特色がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「諸神本懐集」の意味・わかりやすい解説

諸神本懐集
しょしんほんかいしゅう

仏教的神道書。元亨4 (1324) 年,親鸞の3世の孫,覚如の長子,存覚 (1290~1373) の著。2巻。鎌倉時代,天台宗真言宗などで唱えられていた神仏習合神道に対して,浄土真宗の立場から神道を論じたもの。弥陀専念の真宗が神祇尊崇と相いれないという一般の疑惑に対する一種の弁護的著作で,仏陀は神明の本地であり,神明は仏陀の垂迹 (すいじゃく) であるとする立場をとる。したがって,神祇を権社すなわち仏の垂迹である神社を尊崇することは認めるが,実社すなわち垂迹でない神社は認めない。しかし最終的には権社崇拝ではなく,一切の根本である弥陀一仏の信仰に帰すとするものである。

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