諱
いみな
忌み名の意であり、人の死後その実名をいうことを忌むのでそれを諱といった。死後につける諡(おくりな)のこともいった。貴人の諱はやたらに口にすべきものではないとされている。諱については中国の風習がいろいろと移入されている。男の諱は漢字の二字にするなどがそれであった。しかしわが国の諱は中国とは違った慣習が行われていた。家や氏によって決まった一字をつけるなどがそれであり、平家の盛、源氏の義の字をつけることがよく知られている。また輩行によって太郎、二郎、三郎と年の順序によって命名することは今日も一般に行われている。武家社会では主君の諱の一字を臣下に与える風習があった。
[大藤時彦]
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デジタル大辞泉
「諱」の意味・読み・例文・類語
いみ‐な【×諱】
1 生前の実名。生前には口にすることをはばかった。
2 人の死後にその人を尊んで贈る称号。諡。
3 《1の意を誤って》実名の敬称。貴人の名から1字もらうときなどにいう。
[類語]戒名・法名・諡号・贈り名・追号・霊位
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ただ‐の‐みな【諱】
※書紀(720)神武即位前(熱田本訓)「神日本磐余彦の天皇、諱(タタノミナ)は彦火火出見」
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いみな【諱 huì】
中国や日本などで,生前の実名をいう。死後,実名を忌んで口にしない風習より生じた。秦代に始まるとするのが郭沫若の説。のち転じて生存中の名も忌むようになる。名を諱と称する例は漢代からあり,日本でも貴人を敬うときに認められる。諱は,皇帝にかかわる国諱(こくき)についてとくに厳格だが,六朝時代には家諱(かき)の風が流行し,嫌名(けんめい)(似た名の避諱)にまで及んだ。避諱のために,一般には代字を用い,ときに欠字,欠画などを行う。
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世界大百科事典内の諱の言及
【元服】より
…添臥に選ばれた女性がそのまま正妻になることも多く,しかも平安中期以降とくに男子より年上の例が多く,《源氏物語》の光源氏の場合も12歳に対して葵上(あおいのうえ)は四つも年上であった。冠者は元服と同時に童名(わらわな)をやめ実名(諱(いみな))が付けられ,位階を進められた。ちなみに女子では髪上(かみあげ),裳着(もぎ)が元服に当たる。…
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