論理学研究(読み)ろんりがくけんきゅう(英語表記)Logische Untersuchungen

改訂新版 世界大百科事典 「論理学研究」の意味・わかりやすい解説

論理学研究 (ろんりがくけんきゅう)
Logische Untersuchungen

フッサールの現象学の誕生を告げる記念碑的著作。その第1巻《純粋論理学序説》は1900年に,そして6編の論文から成る第2巻の《認識の現象学と認識論のための諸研究》は01年に公刊された。また第1巻と第2巻の第1~5研究の改訂増補版は13年に,第2巻第6研究のそれは21年に出版された。本書全体の根本課題は〈純粋論理学と認識論の新たな究極的基礎づけ〉を遂行することにある。第1巻は,当時優勢であった心理学主義的見解,すなわち論理学的な諸概念や諸命題を心的作用による形成物とみなし,論理学の諸法則をも心理学的な事実法則と解する立場を徹底的に批判して,それら論理学的諸対象が,リアルな心的作用とは異質の〈イデア的意味統一体〉であることを明らかにした。つまり論理学の客観的なイデア学=本質学的性格を強調した。それに対して第2巻の主題は,それらイデア的諸対象を認識する主観意識体験に立ち帰って,その構造や機能を記述分析することにある。この記述的研究の最大成果は,意識の本質特性をなす志向性,すなわち意識はつねに何らかの対象に関係して,それに何らかの意味規定を与えるものであること,したがってまた,われわれにとって認識可能・存在可能な対象は,つねに何らかの意識作用の相関者であるという事情を解明したことや,本質直観可能性とその方法論的重要性を示したことである。しかし本書の論述はまだ不完全であり,その後いろいろ修正される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の論理学研究の言及

【フッサール】より

…職歴と生前の主要著書は以下の通りである。87年から1901年までハレ大学私講師,この間に,基数概念の心理学的分析を試みた《算術の哲学》(1891)と《論理学研究》全2巻(1900‐01)を公刊した。後者は現象学の誕生を告げる記念碑的労作である。…

※「論理学研究」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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