調湿(読み)ちょうしつ(英語表記)humidity control

日本大百科全書(ニッポニカ) 「調湿」の意味・わかりやすい解説

調湿
ちょうしつ
humidity control

空気中の湿度を調整する操作であり、多くの場合、温度調節も伴うので空気調和ともよばれている。目的に応じて増湿あるいは減湿が行われるが、次のような方法がとられている。

〔1〕増湿humidification(1)水蒸気を空気中に直接混入させる。(2)水と接触させ空気中へ蒸発させる。これには、空気を加熱して常温の水と接触させる方法と、温水と接触させる方法とがある。

〔2〕減湿dehumidification(1)吸湿剤による吸着・吸収。これにはアルミナゲルやシリカゲルなどの固体吸湿剤による吸着と、濃硫酸塩化リチウムなどの液体吸湿剤による吸収がある。(2)露点以下の冷水または冷却面と接触させる。(3)圧縮して単位質量当りの水分を減少させる。

 調湿操作は通常、大気圧下の空気中の水蒸気を対象にすることがほとんどである。しかし、化学工場などでは水蒸気のかわりに有機溶媒蒸気を対象とすることも少なくなく、また操作圧力も大気圧下とは限られていない。

[河村祐治]

調湿装置

空気を送る送風部、加熱または冷却を行う温度調節部、および空気と水または吸湿剤とを接触させる増(減)湿部とから構成されており、増(減)湿部には充填(じゅうてん)塔またはスプレー塔が用いられることが多い。圧縮減湿法の場合には圧縮機が併用され、低温度の高圧空気を必要とするときに適している。

[河村祐治]

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化学辞典 第2版 「調湿」の解説

調湿
チョウシツ
gas conditioning, wet control

気体の湿度を希望する値に調節する操作を調湿といい,乾燥などとともに各種の工業で重要な操作の一つである.湿度を増加させる場合を増湿,減少させる場合を減湿(脱湿)という.増湿には,蒸気を吹き込む方法と,液体と接触させる方法とがある.後者のほうが調整が容易なのでもっぱら用いられ,接触のよい噴霧式または充填塔式の装置が使用されている.一方,減湿には,露点以下にまで冷却し,余分の蒸気を液体として取り除く方法,飽和湿度が圧力の増加につれていちじるしく減少する点を利用した圧縮減湿法,吸収減湿法,吸着減湿法などがある.空気の温度,湿度を調節する場合は空気調和という.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「調湿」の意味・わかりやすい解説

調湿
ちょうしつ
gas conditioning

ガス (空気の場合が最も多い) 中に含まれる液体物質 (水の場合が最も多い) の蒸気の量を表現する尺度を湿度というが,この湿度を増減させる操作を調湿という (→空気調和設備 ) 。湿度を増加させる増湿操作 humidificationとしてはガスを液体と接触させるのが最も簡単であるが,ある温度状態では湿度の上限,すなわちこれ以上の液体をガス中にガス状で混合しようとしても液状になってしまう飽和湿度がある。湿度を減少させる減湿操作 dehumidificationとしては吸着,吸収操作を利用したり,ガスの温度を下げたりすることが考えられる。空気の調湿は人間の生活での快適さに大きく影響したり,空気に用いる乾燥操作の設計などに広く用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「調湿」の意味・わかりやすい解説

調湿 (ちょうしつ)
air conditioning

狭義には気体中に含まれる水蒸気量を増減して希望の湿度に調節することをいうが,通常は空気の湿度と同時に温度も調節する操作を意味する場合が多く,空気調和(空調)と同義である。
空気調和
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