調所(読み)ちょうしょ

精選版 日本国語大辞典 「調所」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐しょ テウ‥【調所】

〘名〙
① (「調」は、みつぎものの意) みつぎものを取り扱う役所
※新猿楽記(1061‐65頃)「五畿七道に於て、届(いたら)ざる所なし。六十余国に於て見ざる所なし〈略〉田所・出納所・調所」
江戸時代、江戸市中の四辻などに設けられた番所
人情本・英対暖語(1838)初「辻小路の調所(チャウショ)に呼止られて」

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改訂新版 世界大百科事典 「調所」の意味・わかりやすい解説

調所 (ずしょ)

古代末~中世国衙の軽物(けいもつ)/(かるもの)(絹や布)徴収の業務を担った機関。調は〈みつぎもの〉の意。一般に平安後期以降の検田収納などの国衙行政は(ところ)により運営され,在来郡司の諸機能を吸収しつつ独自の地方支配を展開していた。所にはこの調所のほか検田所,収納所,税所(さいしよ),田所(たどころ)などの機関が存在した。11世紀初頭の成立とされる藤原明衡の《新猿楽記》にもこうした国衙内の〈所〉の存在が指摘されている。国衙における調所の史料上の初見は,1058年(康平1)の丹波国高津郷司解である。その具体的機能については,その後の1124年(天治1)伊賀国黒田荘杣司等解によりある程度推察できる。すなわち〈見米(げんまい)をもって国庫に弁済し,或は軽物をもって調所に進済す〉と見えるのがそれである。これによれば当時の官物には見米あるいは准米などの税目があり,絹などの軽物も見米・准米に換算されるとはいえ,国衙では現実の収納品目により納入機関が定められており,調所は軽物を扱う機関として機能した。
在庁官人
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「調所」の意味・わかりやすい解説

調所
ちょうしょ

平安時代、国衙(こくが)に置かれた役所の一つ。「ずしょ」ともよむ。国衙機構の分業組織として田所(たどころ)・税所(さいしょ)などとともに設置された「所(ところ)」の一つで、本来は調庸(ちょうよう)物の収納・管理を任務とした。しかし、調庸制の変質に伴い、綿、絹、布などの収納やそれらの価格、度量衡に関することなどをつかさどった。税所の官人らと同様に在地の土豪に世襲化され、薩摩(さつま)(鹿児島県)の調所(ずしょ)氏のように調所を姓とする武士も現れた。

[渡辺正樹]

『泉谷康夫著『律令制度崩壊過程の研究』(1972・鳴鳳社)』

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