読物(読み)よみもの

精選版 日本国語大辞典 「読物」の意味・読み・例文・類語

よみ‐もの【読物】

〘名〙
① 読むために書かれたもの。書物。現代では、気軽に読める本、小説の類をいうことが多い。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
※狂言記・文蔵(1660)「それよみ物にとりては庭訓か式状か」
② 読むことを学習すること。読み方。
※咄本・楽牽頭(1772)教訓「不孝なる息子、かんどふせんと立腹最中の処へ、読(ヨミ)ものの師匠、中へはいり」
③ 平曲のうち、伝授事とされた曲。書簡、院宣などの文書を読み上げる部分を中心に置く。康頼祝詞など。
謡曲で、一曲のうちシテが文書を読み上げる部分。詞(ことば)と節(ふし)の中間に位する複雑なリズムのもの。「安宅(あたか)」の勧進帳、「正尊(しょうぞん)」の起請文、「木曾」の願書(がんじょ)などの類。
⑤ 寄席(よせ)で、講釈師または浪曲師の演ずる標題、または題目。
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下「講談は演題(ヨミモノ)には軍談・お家騒動〈略〉探偵談など種々ありて」

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デジタル大辞泉 「読物」の意味・読み・例文・類語

よみ‐もの【読(み)物】

本などを読むこと。「家で読み物をする」
読むために書かれたもの。書物。また、気軽に読めるように書かれたもの。「高校生向けの読み物」「公害問題を読み物にまとめる」
読むに値するような文章・書物。「これはちょっとした読み物だ」
講釈師などが口演する演目
能で、シテが文書を拍子にのせて読み上げる部分。「木曽」の願文がんもん、「正尊しょうぞん」の起請文きしょうもん、「安宅あたか」の勧進帳など。

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世界大百科事典 第2版 「読物」の意味・わかりやすい解説

よみもの【読物】

(1)平曲の分類名。書状その他の長い文書を読み上げる部分を重点とした曲。木曾義仲の命で大夫房覚明が八幡社へ願書を捧げる《願書》(《木曾願書》とも),文覚もんがく)が神護寺復興の寄進勧誘状を読み上げる《勧進帳》,源義経が鎌倉入りを拒まれて釈明文を書く《腰越(こしごえ)》など13曲ある。読物は,〈チラシ〉〈下音〉〈上音〉〈ハコビ〉など,一般の平曲とは著しく異なる曲節の小段を含む伝授物だが,伝承が絶えたためにその詳細はわからない。

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