詞玉緒(読み)ことばのたまのお

精選版 日本国語大辞典 「詞玉緒」の意味・読み・例文・類語

ことばのたまのお ことばのたまのを【詞玉緒】

江戸中期の語学書。七巻。本居宣長著。安永八年(一七七九成立天明五年(一七八五)刊。明和八年(一七七一)の著「てにをは紐鏡」の解説。おもに「八代集」から例を引いて「は・も・徒(ただ)」「ぞ・の・や・何(なに)」「こそ」の三類の係辞に対する結辞の呼応中心に、「てにをは」の用法を実証的に論じた。後世への影響が大きい。玉の緒。

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改訂新版 世界大百科事典 「詞玉緒」の意味・わかりやすい解説

詞玉緒 (ことばのたまのお)

本居宣長が1779年(安永8)に著した文法書。7巻。85年(天明5)初刊。宣長はさきに《てにをは紐鏡(ひもかがみ)》を書いて,〈てにをは〉の係りと用言語尾の結びとの関係を表示したが,本書はその解説書というべく,さらに係結(かかりむすび)に関しない助詞助動詞についても,その意義・用法を示した。多数の例を主として〈八代集〉の間から集めて実証し,また別に,古風の部として《万葉集》,文章の部として平安時代散文の〈てにをは〉についても説いた。係結の法則を組織化したことは画期的であり,〈玉緒派〉と呼ばれるような追随者およびその著述がその後多数あらわれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「詞玉緒」の意味・わかりやすい解説

詞玉緒
ことばのたまのお

本居宣長著。7巻。安永8 (1779) 年成立。天明5 (85) 年刊。いわゆるテニヲハの研究で,係結を中心とする呼応の法則を,『八代集』を主とする歌を資料に実証的に説いたもの。『てにをは紐鏡』の解説編にあたる。名称は,体言・用言などを玉にたとえ,テニヲハはそれらを継ぎ合せてまとまった統一を与える糸の役割を果す,という考えからきている。本書は従来のテニヲハ研究を整理して統一を与えたもので,後世に強い影響を与え,「玉緒派」を生むことになった。

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百科事典マイペディア 「詞玉緒」の意味・わかりやすい解説

詞玉緒【ことばのたまのお】

本居宣長の著した文法書。7巻。1779年成る。宣長が《てにをは紐鏡(ひもかがみ)》で明らかにした係り結びの法則を,八代集(はちだいしゅう)を中心とする古歌によって実証し,係結研究を大成した書。その後,〈玉緒派〉とよばれるような追随者およびその著述が多数あらわれた。

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世界大百科事典(旧版)内の詞玉緒の言及

【係り結び】より

…奈良・平安時代(8~12世紀)の国語において,助詞の〈ぞ〉〈なむ〉〈や〉〈か〉が文中にあるとき,その文の終末部の活用語を連体形で終結し,〈こそ〉があるときは已然(いぜん)形,また,〈は〉〈も〉の場合は終止形で終結する,その助詞と活用形との呼応の関係をいう。鎌倉時代の《手爾波大概抄(てにはたいがいしよう)》や連歌師に注意されていたが,江戸時代に本居宣長が古歌に例を求めてその法則性を立証し,《詞玉緒(ことばのたまのお)》を著した。宣長は〈の〉〈何〉も係りの辞と認めたが,萩原広道が《手爾乎波係辞弁(てにをはかかりことばのべん)》でその誤りを正した。…

【国語学】より

…宣長は,多くの実例の調査にもとづいて,係結(かかりむすび)の法則を帰納し,まず,これを1枚の図表で,《てにをは紐鏡(ひもかがみ)》にまとめて,公にした。ついで,《詞玉緒(ことばのたまのお)》を刊行し,《紐鏡》に図式化したところを中心として,いちいちの助詞の用法を,実例で裏づけた。《玉緒》の末書は,数多く著され,それらによって部分的にはいろいろの補訂が加わった。…

※「詞玉緒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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