(読み)しょう

精選版 日本国語大辞典 「詔」の意味・読み・例文・類語

しょう セウ【詔】

〘名〙 令制で、天皇命令を直接下達する文書養老令の公式令(くしきりょう)では臨時の大事は詔で、尋常の小事は勅で伝えると規定している。詔の草案は中務省の内記が作成し、これに宸筆で御画日(ぎょかくにち)(=天皇が日付の数字を書き入れる)を施し、中務卿に賜う。これは中務省に案として留め、別に一通を写して太政官に送り、大臣・大納言が自署を加え、宸筆で御画可(ぎょかくか)(=「可」字を書き入れる)を施し、太政官に施行(しぎょう)させる。詔は本来読み聞かせるのが主意であり、そのための文体で書かれた詔を宣命という。みことのり。→詔勅
※令義解(833)公式「詔書式。〈謂。詔書勅旨。同是綸言。但臨時大事為詔。尋常小事為勅也〉」 〔文体明弁‐詔〕

しょう‐・す セウ‥【詔】

〘自サ変〙 みことのりする。天子が命令を下す。
※続日本紀‐天平八年(736)一一月戊寅「天皇臨朝、詔授入唐副使従五位上中臣朝臣名代従四位下

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「詔」の意味・わかりやすい解説


しょう

天皇の意志を公布する文書。詔書,みことのり。臨時の大事や大権の施行に関する勅旨を伝える場合に用いられ,中務省の内記が作成した。宣命 (せんみょう) も同義で,詔とともに「みことのり」と読み,いわゆる万葉がなによる国文体の文章 (宣命体) を用いた。平安時代中期頃から宣し読む「みことのり」を宣命といい,文章に書き表わすもの (漢文体のもの) を詔というようになった。料紙は黄麻紙 (おうまし) を用いた。 1907年の勅令でも,皇室の大事,大権施行は詔書をもって公布することが定められたが,47年この名称は廃止された。 (→詔勅 )

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デジタル大辞泉 「詔」の意味・読み・例文・類語

みこと‐のり【詔/勅】

《「御言宣みことのり」の意》
天皇の言葉。仰せ言大御言おおみこと
古文書様式の一。天皇の命令を直接に下す文書。養老令の公式令くしきりょうには詔と勅の二つの様式が規定されている。

しょう【詔】[漢字項目]

常用漢字] [音]ショウ(セウ)(呉)(漢) [訓]みことのり
天子の命令。みことのり。「詔書詔勅聖詔大詔
[名のり]のり

しょう〔セウ〕【詔】

天子の命令を直接伝える文書。みことのり。詔書。

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世界大百科事典 第2版 「詔」の意味・わかりやすい解説

しょう【詔】

天皇のことばそのもの,または天皇のことばを宣(の)べ伝えること,あるいはその文書。法隆寺金銅薬師像の推古15年(607)の銘に見える〈詔〉は天皇のことばを意味し,《日本書紀》大化元年(645)条に〈巨勢徳太臣,高麗使に詔す〉と見えるのは,詔が天皇のことばを宣べ伝える意味に用いられた例である。やがて令の制定により公文書制度が整えられるに従い,詔も文書として記されるようになり,天皇のことばをそのまま和文で表現する詔すなわち宣命と,中国風の漢文の詔の両様式が成立した。

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