(読み)しょう

精選版 日本国語大辞典 「証」の意味・読み・例文・類語

しょう【証】

〘名〙
事実によってあきらかにすること。あかしを立てること。しるし。あかし。
※大鏡(12C前)五「証なきこととおほせらるるに、げにとて、御てばこにをかせたまへる刀まして、たちたまひぬ」
読本椿説弓張月(1807‐11)拾遺「便左に援引して、もて証(セウ)とす」 〔漢書‐周勃伝〕
② 仏語。正法を修めて真実の理を体得すること。悟り。
※百座法談(1110)三月二七日「又此百座の御講はあらたなる証候事なり」
③ 漢方で、病状、症状のこと。

しょう‐・する【証】

〘他サ変〙 しょう・す 〘他サ変〙 (「しょうずる」とも)
① 仏語。仏の教えによって、真理を体得する。悟りをひらく。
今昔(1120頃か)一「忽に果を証して羅漢と成にけり」
② 事実であることを証明する。証拠だてて物事を明らかにする。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一「亜歴西士・徳・多克未爾(アレキシス・ド・トークヴイール)履歴を引て、これを証すべし」
③ 保証する。請け合う。

そう‐・す【証】

〘他サ変〙 (「そう」は「しょう」の直音表記) 証明する。証(しょう)する。
※催馬楽(7C後‐8C)葦垣天地の 神も 神も 曾宇之(ソウシ)たべ 我はまうよこし申さず」

しょう‐・す【証】

〘他サ変〙 ⇒しょうする(証)

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デジタル大辞泉 「証」の意味・読み・例文・類語

しょう【証〔證〕】[漢字項目]

[音]ショウ(呉)(漢) [訓]あかす あかし
学習漢字]5年
確かな根拠に基づいて事実を明らかにする。あかす。「証言証人証明検証考証実証認証論証
事実を明らかにするもの。あかし。「証左証跡引証確証反証物証傍証
証明のための文書。「証券証書/学生証・免許証」
仏教で、悟り。「証果内証ないしょう
[補説]「証」と「證」はもと別字で、「証」はいさめる意を表した。
[名のり]あきら・つく・み
難読内証ないしょ

しょう【証】

証拠。「もって後日のとす」
仏語。正法を修得して真理を悟ること。悟りを得ること。
漢方で、病状、症状のこと。
[類語]証拠証明あかししるし証左証憑しょうひょう徴憑ちょうひょう徴証明証確証実証傍証根拠よりどころ裏付けねた

あかし【証】

《「あかし」と同語源》ある事柄が確かであるよりどころを明らかにすること。証明。証拠。「身のを立てる」
[類語]証拠しょうしるし証左証憑しょうひょう徴憑ちょうひょう徴証明証確証実証傍証根拠よりどころ裏付けねた

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「証」の意味・わかりやすい解説


しょう

漢方医学で用いられる語で、病人が示すさまざまな症状(症候群)をいう。この証の決定は、望診(ぼうしん)、問診(もんしん)、聞診(ぶんしん)、切診(せっしん)という漢方独自の診察によってなされる。こうした総合観察の結果、その病人は葛根湯(かっこんとう)で治るという確証が生まれれば「葛根湯の証」があると診断される。このように、漢方にあっては病名のかわりに処方名の下に証をつけて診断名とする。また、証には主証と客証とがある。主証は必発の症状であり、客証は、主証があるために出現したり消えたりする症状である。漢方における処方は、この主証によって決定される。

[矢数圭堂]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「証」の意味・わかりやすい解説


しょう

漢方用語。証候ともいう。独立した診断概念で,疾病のある段階における病人の自覚・他覚症状などをもとに,病因,病位 (病の位置) ,病性 (病の性情) ,病勢 (病の勢いや方向) などの病理を概括したもの。古来「症」の字と音が同じなので通用したが,「症状」や「症候」とは別のものである。これには「虚証」「実証」「お血 (おけつ) 証 (中国では血お証) 」などのほか,「八味丸証」のように処方名によって呼ばれるものなど各種ある。中国では 1989年に『中医証候弁治軌範』を刊行し,各種の証の概念と名称に関する規準を発表している。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【医薬品】より

…その代表的なものが,後漢(1~3世紀)のころの《神農本草》と,《傷寒論(雑病論)》である。前者は,西方山地に発達したとされる〈薬効ある自然物〉に関する知識をまとめたもので,中国医学における薬学(本草学)の基礎となったものであり,後者は,身のまわりに存在するありふれた薬物(生薬)を適宜に組み合わせて,その総合的効果が十分に発揮できる特定の条件の疾病に用いるという,当時の江南地方の医術における経験が整理され,一定の薬物を配合した処方に適応する条件(これを証という)という根本概念を把握し,体系化したものである。 漢方医学は,高度な臨床治療体系をもち,非常に実用的なものであり,観念的,神秘的な色彩のまったく認められない実践的医学体系であった。…

【漢方薬】より

…陶弘景が《神農本草経》を編纂するに際し用いた底本の一つが《神農本草》である。いま《証類本草》に引用されているのによってみるに,今日漢方で用いる生薬の名称,基源,形質,産地,採集法,調製法,薬効,応用,調剤法が記載されているのがわかる。また,ここには365種の生薬が所載されていて,これらを上薬(120種),中薬(120種),下薬(125種)に分類している。…

※「証」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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