計画造船(読み)けいかくぞうせん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「計画造船」の意味・わかりやすい解説

計画造船
けいかくぞうせん

船舶建造を政府の計画と援助によって行う日本固有の船腹増強方式。海運企業の基盤を強化し,造船業操業を回復させるために 1947年以来実施されており,毎年政府が船舶建造計画を立案,発表し,これに基づいて建造希望船主 (海運業者) に財政融資を行なっている。財政融資は当初,復興金融公庫が行なっていたが,その後これを引継いだ日本開発銀行 (現日本政策投資銀行) が行なってきた。日本船の約8割は計画造船によるもので,第2次世界大戦後の日本造船業界,一定の荷主業界の経営基盤強化に大きな影響を与えた。しかし,計画造船による船腹増強は,基本的には経済成長促進のための国内海運産業システムであり,今後は,安定的な経済成長と海運における南北問題などに適合する海運政策システムが必要とされる。

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世界大百科事典(旧版)内の計画造船の言及

【海運業】より

…しかも,その残存船腹は連合軍総司令部管轄下の船舶運営会が一元的に運航していたが,50年日本海運業の民営還元が実現し,朝鮮戦争勃発とともに日本船の海外定期航路への復帰が認められた。しかし1946年戦時補償を打ち切られた船主には新船建造の資金力はなく,翌年設立の船舶公団が政府と船主との船舶共有方式による計画造船を推進した。49年ドッジ・デフレ政策のもとで船舶公団の機能は停止され,計画造船金融は政府の見返資金会計に,さらに52年以降は日本開発銀行に引き継がれた。…

【造船業】より

…たとえば,日本は輸出比率は9割以上となっている(1996年度の新造船受注量ベース)。 日本が〈造船王国〉と呼ばれるまでになった背景には,(1)多くの港湾立地を可能にする長い海岸線という恵まれた自然条件,(2)日本の労働者の勤勉さ,および高い技術者水準,(3)数多くの造船関連企業群の高い工業技術レベル,たとえば,基礎素材としての鋼材を安価・良質に安定供給できる鉄鋼業の能力,(4)国防や国際収支上の観点から国家が手厚い保護を与えていること,たとえば,輸出船のための日本輸出入銀行延払融資,計画造船制度の強化による国内外航船の建造,そのための利子補給制度,日本開発銀行の低利融資制度などがあげられる。【徳田 賢二】
【江戸末期から第2次大戦まで】
 幕藩体制下で日本在来の造船業は大和型木造船を生み出したが,それは沿岸航行用で渡洋には耐えられなかった。…

※「計画造船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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