触媒毒(読み)しょくばいどく

精選版 日本国語大辞典 「触媒毒」の意味・読み・例文・類語

しょくばい‐どく【触媒毒】

〘名〙 わずかの量で触媒活性を著しく減退させ、あるいはまったく不活性にする物質。触媒毒による作用毒作用または被毒現象という。白金触媒に対する砒素、アンモニア合成鉄触媒に対する硫黄など。

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デジタル大辞泉 「触媒毒」の意味・読み・例文・類語

しょくばい‐どく【触媒毒】

微量存在で、触媒の作用が著しく減少するか、まったく失われてしまうような物質。アンモニア合成反応における酸化鉄触媒の作用を減退させる硫黄分など。

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化学辞典 第2版 「触媒毒」の解説

触媒毒
ショクバイドク
catalyst poison

触媒表面に強く結合して,触媒作用を低下させるか,まったく停止させるなど毒作用を行う物質.反応系分子より強く触媒の吸着点あるいは活性点に結合し,かつ反応に関与しない物質はすべて触媒毒となるので,反応および触媒の種類によって触媒毒は異なる.シクロヘキサン脱水素反応に対するベンゼン阻害や,エテン水素化反応に対するアセチレンの毒作用は強い吸着にもとづいている.E.B. Maxtedによると,周期表8~10族遷移金属および銅触媒に対しては,周期表15族(窒素,リン,ヒ素アンチモン)および16族(酸素,硫黄,セレンテルル)の単体あるいはその化合物で,非共有電子対をもつものは毒となる.また,白金触媒については種々の金属イオンのうち,d電子殻が半占有以上の状態にあるものが毒作用を示すことが知られている.このほか,シリカ-アルミナ触媒による軽油クラッキングにおいて,炭素様物質の生成を促進して活性点(酸点)を覆うことで活性を低下させる沈積重金属や,表面積を減少させて活性を低下させる水蒸気などの効果も触媒毒による作用とみることがある.

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百科事典マイペディア 「触媒毒」の意味・わかりやすい解説

触媒毒【しょくばいどく】

触媒反応において触媒の作用を,微量の存在で著しく減退させるかまたはまったく失わせるような物質。たとえばアンモニア合成反応の酸化鉄触媒に対する硫黄分,接触法硫酸製造での白金触媒に対するヒ素など。
→関連項目触媒

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世界大百科事典(旧版)内の触媒毒の言及

【触媒】より

…また,触媒成分に少量の違う物質を添加し,活性をさらに増大させる助触媒(促進剤ともいう)としては,アンモニア合成用の鉄触媒におけるアルミナやカリウムの例が挙げられる。逆に,少量の添加物質のために活性が著しく低下する,水素化触媒反応における硫黄化合物のような例も数多く知られ,触媒毒と呼ばれる。なお,水素化触媒の活性成分である白金は,一般に表面積の大きいアルミナや活性炭に担持して用いられる。…

※「触媒毒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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