角藤定憲(読み)すどうさだのり

改訂新版 世界大百科事典 「角藤定憲」の意味・わかりやすい解説

角藤定憲 (すどうさだのり)
生没年:1867-1907(慶応3-明治40)

壮士芝居をおこした俳優岡山県生れ。《東雲(しののめ)新聞》の記者時代,中江兆民のすすめで〈大日本壮士改良演劇会〉を組織し,1888年12月大阪の新町座で自作小説を脚色した《耐忍之書生貞操佳人(こらえのしよせいていそうのかじん)》ほかを上演新演劇新派)の先駆者となった。94年には一座をひきいて上京,その後も〈壮士演劇元祖〉を名のって各地を巡業したが,演技が粗雑であったうえに経営の才がなく,晩年は不遇だった。
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百科事典マイペディア 「角藤定憲」の意味・わかりやすい解説

角藤定憲【すどうさだのり】

壮士芝居を起こした俳優。岡山県生れ。京都で巡査をしたのち,大阪で《東雲(しののめ)新聞》記者となり,中江兆民のすすめで自由民権運動の普及をめざした〈大日本壮士改良演劇会〉の一座を組織,1888年大阪新町座で旗揚げ,新派劇発生の端緒となった。演技は稚拙で,経営の才に乏しく不遇のうちに一生を終えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「角藤定憲」の意味・わかりやすい解説

角藤定憲
すどうさだのり
(1867―1907)

俳優。岡山に生まれる。京都で巡査を勤めたのち、大阪で『東雲(しののめ)新聞』の記者となり、自由党壮士として活動していたが、中江兆民(ちょうみん)、栗原亮一(りょういち)の示唆により演劇を通じて大衆の啓蒙(けいもう)を試みることを決意した。1888年(明治21)12月に、大阪の新町座で「大日本壮士改良演劇会」の旗揚げ公演を行い、角藤の作になるとみられる『耐忍之書生貞操佳人(こらえのしょせいていそうかじん)』と『勤王美談上野曙(きんのうびだんうえののあけぼの)』を上演、のちにこれが新派劇の嚆矢(こうし)といわれた。その後西日本を巡業し、94年に『快男児』をもって上京したが、すでに川上音二郎らの新派劇が定着したあとで、あまり評判にならなかった。巡業先の神戸・大黒座の楽屋で没した。

[松本伸子]

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朝日日本歴史人物事典 「角藤定憲」の解説

角藤定憲

没年:明治40.1.20(1907)
生年:慶応3.7(1867)
明治期の新派俳優。備前国(岡山県)生まれ。大阪で自由党員となり,『東雲新聞』記者となった。明治21(1888)年中江兆民らの支持を得て大日本壮士改良演劇会を結成,大阪新町座で自作を脚色した「耐忍之書生貞操佳人」などを上演,新演劇(のちの新派劇)の嚆矢となった。27年には「怪男児」ほかをもって東京で公演,以後も各地を巡演したが,演技が無骨粗雑であったうえに,経営の才にとぼしく,不遇のうちに神戸大黒座の楽屋で没した。

(藤木宏幸)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「角藤定憲」の意味・わかりやすい解説

角藤定憲
すどうさだのり

[生]慶応3(1867).7. 岡山
[没]1907.1.20. 大阪
壮士芝居の創始者。中江兆民の門下,自由党壮士。 1888年 12月大阪新町座で改良演劇として自作小説を脚色した『耐忍之書生貞操佳人』と『勤王美談上野曙』を上演,新演劇の導火線となった。川上音二郎の東上におくれを取るなど興行の才に乏しく,晩年は不遇に終った。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「角藤定憲」の解説

角藤定憲 すどう-さだのり

1867-1907 明治時代の舞台俳優。
慶応3年7月生まれ。壮士芝居(のちの新派劇)の創始者。大阪で自由党にはいり,中江兆民らのすすめで明治21年大日本壮士改良演劇会を組織し,大阪新町座で「耐忍之書生貞操佳人(こらえのしょせいていそうのかじん)」などを上演した。明治40年1月20日死去。41歳。備前(岡山県)出身。

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世界大百科事典(旧版)内の角藤定憲の言及

【新派】より

…しかし,今日われわれが〈新派〉と呼びならわしている演劇ジャンルの発端は次の二つの動きの中に見ることができる。一つは1888年12月3日,大阪の新町座で自由党壮士角藤定憲(すどうさだのり)が〈日本改良演劇〉を名乗り,《耐忍之書生貞操佳人(こらえのしよせいていそうのかじん)》などを上演し,また遅れて91年2月5日,堺の卯(う)の日座で川上音二郎が新演劇の旗揚げをした,いわゆる壮士芝居,書生芝居の運動である。彼らは,ともに民権運動期の政治講談,政治小説を劇化上演したが,もはや民権運動が衰退した時期にあって,思想鼓吹が主たる目的というよりも,生活手段を芝居に求めたという気味が強かった。…

※「角藤定憲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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