角膜レーザー手術(読み)かくまくれーざーしゅじゅつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「角膜レーザー手術」の意味・わかりやすい解説

角膜レーザー手術
かくまくれーざーしゅじゅつ

目の屈折異常を矯正する手術の一つ。エキシマレーザーを照射して角膜前面の曲率を変え、光の屈折率を調整することにより近視遠視乱視を矯正する。角膜表層実質を削るレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK:photorefractive keratectomy)と角膜内部を削るレーザー角膜内切削形成術(レーシックLASIK:laser in situ keratomileusis)があるが、PRKは角膜混濁をおこすことがあるため、レーシックが多用される。なお、屈折矯正手術ではなく、角膜の混濁を除去して視力を回復させるレーザー手術に、治療的表層角膜切除術(PTK:phototherapeutic keratectomy)がある。

 レーシックは、マイクロケラトームとよばれる鉋(かんな)のような金属刃で角膜表層を薄く削ってフラップ(蓋(ふた))を作成し、露出した角膜実質をエキシマレーザー照射により切削して屈折率を調整した後、フラップを元に戻す術式である。しかし屈折異常が強度なほど切削量は多くなり、角膜が菲薄(ひはく)化して眼圧で前方に膨らむ角膜拡張をおこす危険性もある。そのため、適応範囲には制限があり、角膜の厚さなども考慮する。術後に痛みを伴うことは少なく、また角膜混濁をおこすこともほとんどない。また、レーシックでは術後早期より裸眼視力の向上がみられる。より安全にフラップを作成するためにマイクロケラトームの改良も重ねられているが、コンピュータ制御のもとにイントラレーザーを用いてフラップをごく薄く作成できるイントラレーシックも開発されている。

 レーシック手術の成功率は非常に高いが、合併症がおこる可能性があり、また角膜実質を切削するため、元に戻すことができない。そのため、2013年(平成25)12月に消費者庁は、レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を十分に受けるよう注意を促している。

 そのため、角膜にレーザーを照射する別の矯正治療として、レンチクル(シート状の角膜層の切片)を作成し、これを摘出することで屈折矯正を行うリレックス(ReLEx:refractive lenticule extraction)が開発されている。リレックスには、レーシックと同様、フラップを作成したのちにレンチクルを摘出するフレックスFLEx:femtosecond lenticule extraction)もあるが、2~3ミリメートルの小さな切開創をつくり、そこからレンチクルを取り除くスマイルSMILE:small incision lenticule extraction)が、一般的な治療法として用いられている。スマイルの利点はフラップを作成しないことで、角膜の切開幅が小さいため侵襲も少なく、ドライアイなどの合併症を回避でき(生じにくい)、外傷に対しても強いという利点がある。

 このほか、眼内レンズ移植により角膜を削らずに矯正を行う眼内コンタクトレンズ(ICL:implantable collamer lens)挿入術があるが、取り外しが容易という利点とは別に、これまでは眼圧上昇や白内障などの合併症の危険性があった。しかし2014年、こうした危険性を回避できる穴あきICLが医療機器として承認を受け、侵襲が少なく患者の負担を軽減できる矯正手術として用いられるようになっている。

[編集部 2016年8月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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