角帽子(読み)つのぼうし

精選版 日本国語大辞典 「角帽子」の意味・読み・例文・類語

つの‐ぼうし【角帽子】

〘名〙
二等辺三角形布帛(ふはく)底辺に紐(ひも)をつけて額にあてて結んだ被物(かぶりもの)平安時代には黒色のものを用いて子ども用としたが、近世にはいり死者の額に白色のものを用いた。額えぼし。
浮世草子・庭訓染匂車(1716)四「母の幽霊れいれいとあらはれ、やいとのふたほどの角帽子あて、脇の下の毛のごとき黒髪おつさばき」

すみ‐ぼうし【角帽子】

〘名〙
① 死者にかぶせる頭巾。すんぼうし。
※浮世草子・新御伽婢子(1683)五「白き姿にすみ帽子(ボウシ)して仏前にむかひ居る」
申楽談儀(1430)能の色どり「ただ、角帽子の縫物を略して、年寄しく、濁らかして着べし」

すん‐ぼうし【角帽子】

〘名〙 (「すみぼうし(角帽子)」の変化した語) 死者にかぶせる頭巾。すんぼし。
浄瑠璃摂津国長柄人柱(1727)三「面影隠す綿帽子未来の為にすんばうし、逆様事のとりおきは是も約束嫁入も約束」

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デジタル大辞泉 「角帽子」の意味・読み・例文・類語

すみ‐ぼうし【角帽子】

死者にかぶせる頭巾ずきん。すんぼうし。
能のかぶり物の一。上がとがり、後ろを背中へ長く垂らす頭巾。ワキ僧の大部分シテ一部が用いる。すんぼうし。

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改訂新版 世界大百科事典 「角帽子」の意味・わかりやすい解説

角帽子 (すんぼうし)

能のかぶり物。僧形の役がかぶる頭巾の一種。〈すみぼうし〉ともいう。紺,茶などの無地の緞子(どんす)で作り,頭部が三角にとがっていて後ろに長く垂れさがり,平紐で後頭部を結ぶ。多くワキ・ワキヅレの僧の役に用いるが,シテでは《熊坂》の前ジテ,《俊寛》《景清》などに用いる。また角帽子の後ろを短く折り込んで着用することを〈沙門(しやもん)に着る〉または〈沙門帽子〉といい多く金襴で作る。流儀や演出により高僧の役に用いる。
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世界大百科事典(旧版)内の角帽子の言及

【角帽子】より

…多くワキ・ワキヅレの僧の役に用いるが,シテでは《熊坂》の前ジテ,《俊寛》《景清》などに用いる。また角帽子の後ろを短く折り込んで着用することを〈沙門(しやもん)に着る〉または〈沙門帽子〉といい多く金襴で作る。流儀や演出により高僧の役に用いる。…

【被り物】より

… 一方,布で頭を包む古くからの習風は,江戸時代に入ると,女子の被り物としての各種の帽子を生み出した。その代表的なものとしては,揚帽子,角帽子,野郎帽子,綿帽子がある。揚帽子は表は白,裏は紅絹の袷仕立てで,俗に白鷺と呼ばれた。…

※「角帽子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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