観世寿夫(読み)カンゼヒサオ

デジタル大辞泉 「観世寿夫」の意味・読み・例文・類語

かんぜ‐ひさお〔クワンゼひさを〕【観世寿夫】

[1925~1978]能楽師シテ方観世流東京の生まれ。7世観世銕之丞長男戦後能楽界の旗手存在として活躍。能楽研究や演劇運動も行った。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「観世寿夫」の意味・わかりやすい解説

観世寿夫 (かんぜひさお)
生没年:1925-78(大正14-昭和53)

能楽師,観世流シテ方。東京の生れ。観世宗家の分家,7世観世銕之丞(てつのじよう)雅雪(1898-1988)の長男。1944年清寿(きよひさ)と改名,49年本名の寿夫に戻る。祖父観世華雪師事。早くから天分を認められ,第2次大戦後能楽界の旗手的存在として活躍。天賦技量と努力,研究熱心によって,演出意図の透徹した能を演じ,たえず古典の正統的な継承と現代への再生を志向した。世阿弥伝書を中心とする能楽研究や新しい演劇運動にも参加した。〈能楽ルネッサンスの会〉主催の世阿弥伝書研究会やグループ〈華の会〉〈冥の会〉における活動はその表れである。62年フランス政府招聘日仏演劇交換第1回留学生として滞仏,ジャン・ルイ・バローらとの交流は終生続いた。汎演劇的視野で能を考え,能楽界を超えた幅広いファン層を獲得したが,円熟期を迎える前に急逝没後《観世寿夫著作集》全4巻が編まれた。弟に観世栄夫(1927-2007),8世観世銕之丞(1931-2000)がいる。
観世流
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「観世寿夫」の意味・わかりやすい解説

観世寿夫
かんぜひさお
(1925―1978)

能のシテ方。観世流宗家の分家、7世観世銕之丞(てつのじょう)(雅雪)の長男。前名清寿(きよひさ)。栄夫(ひでお)、静夫(8世銕之丞)はその弟。天分と精進と理論の兼ね備わった名手で、能界に大きな影響を与えた。華の会などを結び、傑出した演技で古典の能にも新風を吹き込むほか、新作能『智恵子抄(ちえこしょう)』『鷹姫(たかひめ)』、前衛音楽と能の技法の融合『水の曲』、冥(めい)の会を主宰しての『オイディプース』『ゴドーを待ちながら』『名人伝』や、『トロイアの女』など、新しい演劇運動にも大きな足跡を残した。ジャン・ルイ・バローらとも演劇の国際交流を果たした。著書に『心より心に伝ふる花』ほか。

増田正造

『『観世寿夫著作集』全4巻(1980~81・平凡社)』『渡辺守章編『幽玄――観世寿夫の世界』(1980・リブロポート)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「観世寿夫」の意味・わかりやすい解説

観世寿夫【かんぜひさお】

楽師。観世流シテ方。東京都生れ。観世宗家の分家に生まれ,父7世銕之丞(てつのじょう)の兄華雪に師事,第2次大戦後能楽界の旗手的存在となる。世阿弥の伝書を中心とする能楽研究に力を入れ,古典の正統的継承に努めるとともに,前衛的な演劇運動にも参加,能を現代の演劇として再生させようとした。1962年日仏演劇交換第1回留学生として滞仏し,フランスの舞台俳優ジャン・ルイ・バローらと交流。1976年にはヨーロッパ公演を行っている。《観世寿夫著作集》全4巻がある。
→関連項目観世栄夫

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「観世寿夫」の意味・わかりやすい解説

観世寿夫
かんぜひさお

[生]1925.11.12. 東京
[没]1978.12.7. 東京
能楽師,観世流シテ方。7世観世銕之丞 (雅雪) の長男。第2次世界大戦後の能楽界における旗手として活躍。 1962年フランス政府招聘留学生となり,J.-L.バローらと親交を結ぶ。以降,演出意図の透徹した古典能を継承する一方,現代演劇・現代音楽界との交流も行い,新作能や電子音楽の舞踊化などで幅広い支持層を得た。円熟期を迎える前に急逝。没後『観世寿夫著作集』 (4巻) が編まれた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「観世寿夫」の解説

観世寿夫 かんぜ-ひさお

1925-1978 昭和時代の能楽師シテ方。
大正14年11月12日生まれ。7代観世銕之丞(てつのじょう)の長男。父と祖父の観世華雪に師事。傑出した芸と理論で戦後の能楽界をリード,華の会を組織し古典の能に新風をふきこむ。「智恵子抄」などの新作能を演じ,冥(めい)の会を結成して「オイディプース」を上演するなど,あたらしい演劇運動にも参加した。昭和53年12月7日死去。53歳。東京出身。前名は清寿(きよひさ)。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android