見物左衛門(読み)ケンブツザエモン

デジタル大辞泉 「見物左衛門」の意味・読み・例文・類語

けんぶつ‐ざえもん〔‐ザヱモン〕【見物左衛門】

見物人人名らしくいった語。田舎から出てきた見物客や吉原のひやかし客などにいう。
「―をあてに土手茶屋」〈柳多留二一

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精選版 日本国語大辞典 「見物左衛門」の意味・読み・例文・類語

けんぶつ‐ざえもん ‥ザヱモン【見物左衛門】

[1] 〘名〙 見物人を擬人化していうことば。多くは、いなかから都を見物に来た人、または吉原のひやかしをする人などにいう。
※雑俳・柳多留‐二一(1786)「見物左衛門をあてに土手の茶屋」
[2] 狂言独狂言(ひとりきょうげん)
[一] 和泉流番外曲。見物左衛門が地主(じしゅ)の桜や西山の桜を見て回るという筋。小謡(こうたい)、小歌、小舞などがはいる。
[二] 和泉流・大蔵流八右衛門派の番外曲。見物左衛門が深草祭流鏑馬(やぶさめ)相撲を見て回るという筋。大蔵流では「深草祭」という。

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改訂新版 世界大百科事典 「見物左衛門」の意味・わかりやすい解説

見物左衛門 (けんぶつざえもん)

狂言の曲名。和泉流三宅派の番外曲で,現在もしばしば上演される。見物左衛門と名のる男がシテだが他に登場人物はなく,終始シテ一人の独白と仕方で演じる,特異な独り狂言。筋立て・演出には,小書(こがき)ともいうべき《深草祭》と《花見》の二通りがあるが,上演に際しては小書を付ける場合も付けない場合もある。《深草祭》は,5月5日,京都深草にある藤森神社の祭に出かけて流鏑馬(やぶさめ)や相撲などを見物して興じる様子を見せる狂言。《花見》は,地主(じしゆ)の桜や西山の桜を見てまわる様子を見せる狂言で,謡や小舞が入る。独演部分の演戯性が肥大化して1曲を構成した,趣向演者の技量本位の曲。現在は和泉流だけにある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「見物左衛門」の意味・わかりやすい解説

見物左衛門
けんぶつざえもん

狂言の曲名。和泉流の番外曲。一人狂言で,『花見』と『深草祭見物』の2種がある。『花見』は,見物左衛門という男が花見に出かけ,地主 (じしゅ) の桜や西山の桜を見て回る様子を演じ,小謡,小歌,小舞などが入る。『深草祭見物』は,見物左衛門が5月5日の深草祭 (藤森神社の祭り) に出かけて,祭りに行われる流鏑馬 (やぶさめ) や相撲などを見物する様子を演じる。大蔵流八右衛門派および鷺流にもあった。青本や,黄表紙もつくられ,同名の評判記もある。また3世桜田治助の手により歌舞伎でも上演された。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「見物左衛門」の解説

見物左衛門
けんぶつざえもん

歌舞伎・浄瑠璃外題
作者
桜田治助(3代)
初演
嘉永4.1(江戸・市村座)

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