西竹一(読み)にしたけいち

改訂新版 世界大百科事典 「西竹一」の意味・わかりやすい解説

西竹一 (にしたけいち)
生没年:1902-45(明治35-昭和20)

昭和期の馬術競技選手。鹿児島県出身。男爵西徳二郎の子。陸軍幼年学校から陸軍士官学校に進み,同校第36期卒業。在学中から馬術競技に親しみ,卒業後も1924年に騎兵将校として馬術競技に専念,先輩の遊佐幸平教官の指導を受け,天分を開花させた。32年の第10回ロサンゼルス・オリンピック大会に馬術大賞典障害飛越競技の選手として初出場,愛馬ウラヌス号(フランス産)にまたがった西は,〈バロンニシ〉の大歓声に包まれて優勝した。オリンピック初出場で初優勝の快挙であった。続くベルリン大会(1936)にも出場し,大障害団体で日本の6位入賞に貢献した。33年に騎兵学校教官となり後輩の指導にあたったが,太平洋戦争下の45年,硫黄島でアメリカ軍の攻撃を受けて戦死した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西竹一」の意味・わかりやすい解説

西竹一
にしたけいち
(1902―1945)

馬術競技の名手。東京都出身で男爵西徳二郎の子。1932年(昭和7)の第10回オリンピック・ロサンゼルス大会に出場(当時騎兵中尉)。最終日の大賞典障害飛越競技に愛馬ウラヌス号を駆って、各国代表が次々と失敗したあとを受け、19個の障害をみごとに飛越して優勝した。前年の31年にアイリッシュ・ボーイ号(アイルランド産ハンター種)に騎乗して出した2メートル10の単一高度障害飛越の日本記録は、現在でも破られていない。ベルリン大会出場後、満州赴任。44年硫黄(いおう)島守備の戦車第26連隊長として出陣。ウラヌス号のたてがみを切って持参したという。45年2月米軍の上陸作戦が開始。激戦下、米軍はロサンゼルス大会の英雄を愛惜する意から、再三、西に投降を呼びかけた。同年3月戦死。死後大佐。戦後、未亡人は、自宅に残されたむち(オリンピックのとき愛用)を、要請によりヘルメス財団(ロサンゼルス)に寄贈した。

[石井恒男]

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百科事典マイペディア 「西竹一」の意味・わかりやすい解説

西竹一【にしたけいち】

馬術競技選手。鹿児島県出身。陸軍士官学校卒。日本近代馬術競技の創始者遊佐(ゆさ)幸平の指導を受け,1932年のロサンゼルスオリンピックの馬術大賞典障害飛越競技に初出場し優勝。1933年騎兵学校教官となり後輩の指導にあたったが,1945年硫黄島で戦死。
→関連項目馬術

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西竹一」の意味・わかりやすい解説

西竹一
にしたけいち

[生]1902.7.12. 東京
[没]1945.3.22. 硫黄島
馬術選手。陸軍軍人。男爵。欧米人からはバロン・ニシと呼ばれた。男爵の三男に生まれ,学習院初等科から陸軍幼年学校を経て 1921年陸軍士官学校に入学。騎兵中尉に進級した。 1932年ロサンゼルス・オリンピック競技大会に出場,大会最終日に行なわれた大賞典障害飛越個人に愛馬ウラヌスに乗り優勝した。第2次世界大戦末期に硫黄島で戦死。主人の死後まもなくウラヌスも病死したといわれる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「西竹一」の解説

西竹一 にし-たけいち

1902-1945 昭和時代前期の軍人,馬術選手。
明治35年7月12日生まれ。西徳二郎の3男。昭和7年ロス五輪に出場し,馬術大賞典障害飛越に愛馬ウラヌス号で優勝。欧米ではバロン-ニシとよばれた。太平洋戦争中,昭和20年3月22日硫黄(いおう)島で戦死。死後陸軍大佐。44歳。東京出身。陸軍士官学校卒。

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世界大百科事典(旧版)内の西竹一の言及

【馬術】より

…翌22年日本乗馬協会が誕生し,28年の第9回アムステルダム・オリンピック大会に初めて出場した。32年の第10回ロサンゼルス・オリンピック大会には陸軍中尉西竹一がウラヌス号に騎乗して大賞典障害飛越に優勝した。第2次世界大戦によって馬術界は一時衰退したが,48年日本馬術連盟としてふたたび中央統轄団体が復活し,同年日本体育協会に加盟してアマチュアスポーツとしての形を整えた。…

※「西竹一」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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