襁褓(読み)きょうほう

精選版 日本国語大辞典 「襁褓」の意味・読み・例文・類語

きょう‐ほう キャウ‥【襁褓・繦

〘名〙 (「襁」「繦」は赤子を背負う帯。「褓」「」は赤子をおおう衣)
① 赤子を包むかいまき産着。むつき。転じておむつ。おしめ。きょうほ。
三代実録‐貞観一四年(872)三月九日「自朕在襁褓。以至今時
平家(13C前)四「近衛院三歳、六条院二歳、これみな襁褓のなかにつつまれて」 〔列子天瑞
② 赤子のこと。きょうほ。
江都督納言願文集(平安後)藤大納言母堂作善「始之時、早蒙猶子之養
神皇正統記(1339‐43)中「応神うまれ給て襁褓(キャウホウ)にましましかば、神功皇后天位にゐ給」 〔班倢伃‐自悼賦〕

むつき【襁褓】

〘名〙
① 生まれたばかりの子どもに着せる衣。うぶぎ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)九「覆護の重きこと、褓(ムツキ)に在りて先きとする所なり」
幼児の、大小便を取るために、腰から下に当てるもの。おむつ。おしめ。しめし。〔文明本節用集(室町中)〕
③ ふんどし。とうさぎ
源平盛衰記(14C前)一〇「木の皮をはねかづらとして額に巻き、赤裸にてむつきをかき」

もつき【襁褓】

〘名〙 =むつき(襁褓)①〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

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デジタル大辞泉 「襁褓」の意味・読み・例文・類語

むつき【襁褓】

幼児や病人の大小便を取るために、腰から下に当てておくもの。おしめ。おむつ。
生まれたばかりの子に着せる衣。産着。
御衣おんぞ、御―」〈栄花初花
ふんどし。
「赤裸にて―をかき」〈盛衰記・一〇〉
[類語]おしめおむつ

お‐しめ【襁褓/御湿】

《「しめ」は湿布しめしの略》乳幼児などの股を覆って大小便を受ける布や紙。おむつ。むつき。「―を当てる」
[類語]おむつむつき

きょう‐ほう〔キヤウ‐〕【××褓】

おむつ。おしめ。
赤子のこと。
赤ん坊をくるむ布。産着。
「近衛院三歳、六条院二歳、これみな―の中に包まれて」〈平家・四〉

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普及版 字通 「襁褓」の読み・字形・画数・意味

【襁褓】きようほう(きやうはう)

襁はおびひも、褓は小児の衣。背に負うほどの幼少の時をいう。〔大戴礼保傅〕昔(むかし)、王幼にして、襁褓の中に在り。召、大保と爲り、、大傅と爲り、太大師と爲る。

字通「襁」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「襁褓」の意味・わかりやすい解説

襁褓
むつき

おしめ、おむつともいう。襁はおびひもで、幅八寸(約24センチメートル)、長さ二尺(約60センチメートル)の絹織物でつくり、小児を背に約(やく)して負うもの、褓は小児の被衣のことで、転じて、幼少のときという意味もある。『和名抄(わみょうしょう)』(931~938ころ)、『紫式部日記』(1008~10)にすでにこの呼び名がみえる。『和漢三才図会』(1712)には「児の腰尻に当て、不浄の物を受ける小巾をさす」とあり、このころには、小児出生のとき、外祖母が襁褓を12枚贈る風習があったという。有職(ゆうそく)故実書の『貞丈雑記』(1763~84)には小児の衾(ふすま)(寝るとき、上にかぶせるもの)のことを称したとある。

[岡野和子]

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世界大百科事典(旧版)内の襁褓の言及

【おむつ】より

…おしめは〈湿し〉の女性用語で,排尿便を意志でコントロールできない乳幼児,あるいは自力で用が足せない病人,老人の大小便の始末のために,腰部,股間にあてる布や紙ナプキンをさしている。 おむつは〈むつき(襁褓)〉に由来する。褓は体をくるむ布,襁はそれをしばるひもを意味し,もともと,生まれたばかりの赤子の体をくるむ布をさしていた。…

【子ども服】より

…通学服や運動服に洋服が取り入れられるようになったのは大正時代の末ころからである。【池田 孝江】
[日本の着物]
 平安時代の貴族社会では,赤子に着せる綾などの衣服を襁褓(むつき)といい,祝いに贈る風習があった。これは今日の宮参りの祝着に関係があると思われる。…

※「襁褓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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