精選版 日本国語大辞典 「裾」の意味・読み・例文・類語
すそ【裾】
[1] 〘名〙
① 衣服の下の縁(ふち)。衣服の脚にあたるところ。
※古事記(712)中・歌謡「汝(な)が着(け)せる 襲(おすひ)の須蘇(スソ)に 月立ちにけり」
※平家(13C前)一一「まっさきにすすんだる安芸太郎が郎等をすそをあはせて、海へどうどけいれ給ふ」
② 袍(ほう)などの下端についている横幅の布。襴(らん)。
※古事記(712)中「閇蘇(へそ)紡麻を針に貫きて、其の衣の襴(すそ)に刺せ」
③ 山のふもと。山脚。裾野。あるいは、山のようになっているものの下端の部分。
※表佐千句(1476)二「たちともしるしつまこふる鹿〈続家〉 しら露もさ山がすその月深て〈宗祇〉」
※俳諧・曾良随行日記(1689)俳諧書留「乗放牛を尋る夕間暮〈風流〉 出城の裾に見ゆるかがり火〈木端〉」
④ 川しも。下流。
※中華若木詩抄(1520頃)上「鴎は其流水のすそにあれば」
⑤ もののはし。下端や末の部分。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「みすの下より箏の御琴のすそ少しさしいでて」
⑥ 髪の毛の末端。髪の毛の先。
※蜻蛉(974頃)下「たけ四尺許にて、髪はおちたるにやあらん、すそさきたる心ちして、たけに四寸許ぞたらぬ」
⑦ からだの足。膝から下。足もと。
※明徳記(1392‐93頃か)中「長具足にてさしあはせ、太刀うしろへ立廻て、
をきれ」

※俳諧・曠野(1689)員外「誰か来て裾にかけたる夏衣〈其角〉 歯ぎしりにさへあかつきのかね〈越人〉」
※怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉八「真青な顔で、裾がなくって腰から上ばかりで」
⑧ 馬の四足。また、それを洗うこと。洗い湯のことにもいう。→裾をする。
※鶴岡放生会職人歌合(15C後か)九番「御空行月毛の駒をひきとめてひのくま川にすそやあらはん」
※虎明本狂言・人馬(室町末‐近世初)「身共が馬になったらば、馬とりは則そちであらうが〈略〉すそなどをも、さいさいしてくれさしめ」
⑨ 囲碁で、一定の地域を構成している下方の(盤端に近い)部分。
[2] 「すそつぎ(裾継)(二)」の略。
※洒落本・登美賀遠佳(1782)「すぐに中町はとうだらう。善はすそくらいなれど、光がまへが有ゆへ、中といふ」
きょ【裾】
〘名〙
① 装束の後身(うしろみ)の下端。
② 下襲(したがさね)の尻(しり)の長く垂れた部分。鎌倉時代以降、天皇の料以外は切り離して別物とし、それを別裾(べっきょ)という。地紋も下襲と同じで、長さは時代により官位によって一様でない。近世は、関白は腰より先一丈五尺(約四・五メートル)、殿上人は七尺(約二・一メートル)とする。きぬのしり。

※山槐記‐仁安二年(1167)二月一一日「将軍殿〈略〉於二門外一令二乗車一給、予褰二御車簾一、五品行雅取レ裾、前駈人御随身如レ恒」
※雑俳・柳多留‐四七(1809)「きょを踏まれてはつんのめる相馬公家」
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