製織(読み)せいしょく(英語表記)weaving

精選版 日本国語大辞典 「製織」の意味・読み・例文・類語

せい‐しょく【製織】

〘名〙 織物機械で織物を織ること。機織(きしょく・はたおり)
東京の三十年(1917)〈田山花袋〉私と旅「自分の家で製織してゐた結城木綿を一反私にくれた」

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デジタル大辞泉 「製織」の意味・読み・例文・類語

せい‐しょく【製織】

機械で織物を織り上げること。

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改訂新版 世界大百科事典 「製織」の意味・わかりやすい解説

製織 (せいしょく)
weaving

織物を製造することで,機織(きしよく)ともいう。織物は前4000年ころにはすでにエジプトで作られており,その歴史はかなり古い。昔は織機のことを機(はた)といい,物語や伝説にみられるように機織(はたおり)(布帛(ふはく)を織ること)は女性の仕事であった。現在では各種の自動織機が使用され,製織が専門用語となっているが,小規模で織物を作っている家または職業は機屋(はたや)と呼ばれ,機織という場合も多い。また古代の布は植物繊維で作った織物をさすが,その後,織物全体をさすようになり,製織は織布とも呼ばれた。最近では不織布,編物も含めて繊維あるいは糸で布状のものを作ることを製布と呼び,織物を作ることを製織というようになった。また染色を含めて染織,紡績を含めて紡織という場合もある。織物は織物設計,製織準備工程を経て織機で作られる。

まず作ろうとする織物の組織図を作り,織物に適した織機を決める。平織であれば綜絖(そうこう)は2枚あればよく,それぞれ偶数および奇数番目の経(たて)糸を通せばよい(ホビー用のものでは原始機のように綜絖が1枚のものもある)。組織が複雑になると綜絖および筬(おさ)への経糸の通し方,綜絖を上下させる組合せ,順序を示す織り方図を作る。綜絖枚数が少ないときはタペット織機でよいが,多くなるとドビー織機を使用し,各緯(よこ)入れごとに引き上げるべき綜絖を示した紋せん(栓)図も作る(これに従ってドビーの紋せんを植える)。さらに複雑な紋織物などではジャカードを使用し,緯入れごとに引き上げる経糸を指定する紋紙を作るための意匠図を作る。最近では,希望の絵柄をコンピューターが自動的に読み取り,この情報に基づいて電気的に経糸を上下させて織物を作る装置もある。次に織物の幅,長さを決め,織物の用途,色柄,厚さ,重さ,柔らかさ,表面状態などを考慮して,次のようなことがらを決める。(1)糸の種類(繊維名,太さ,撚数,色,紡績糸かフィラメント糸か),(2)経糸,緯糸の密度(単位長さ当りの糸本数),(3)整経長および幅(織物内では糸は屈曲し,織縮みを生ずることを考慮する),(4)経糸および緯糸の必要量。なお織物見本がある場合は,見本の糸を調べて決める(織物分解)。

これには次のような工程がある。(1)繰返し 各種ワインダーを用い,かせ,チーズ,ボビンなどいろいろな形状に巻かれている糸を,整経に必要な長さだけ整経用ボビンまたはチーズに巻き返す作業。後の工程で糸切れの原因となる糸の弱いところ,大きな節などを取り除き,製織能率を高めるために行う。合成繊維フィラメント糸では不必要な場合もある。(2)整経 多数の整経用ボビンまたはチーズをクリールに並べて糸を引き出し,設計した織物に見合った幅に所要本数の経糸をワープビームに巻き取る作業。無地織物の大量生産には,まず粗巻整経機が用いられ,所要本数の1/nの経糸を所定幅に引きそろえて巻いたビームをn個作り,このn個のビームから引き出した糸を重ね合わせてのり付けを行った後,1本のワープビームに巻き取る。1セットで数百台の織機に経糸を供給できる。縦縞の織物では部分整経機が用いられる。各種色糸を縞の繰返し単位だけ引きそろえてビームの端に巻き,これに接してつぎつぎと所定の長さだけ,所定の幅に経糸を巻きつけるもので,後で経巻機により織機用のワープビームに巻き返しておく。(3)のり付け 製織中に経糸が筬,綜絖などとの摩擦により損傷したり,毛羽立ったりしないよう,あるいは糸の毛羽を伏せ,強度を増し,合繊では静電気の発生を防ぐために経糸にのりを付ける。のりにはデンプンのほか,PVA(ポリビニルアルコール),CMC(カルボキシメチルセルロース)などが使用され,目的に応じて粘着剤,柔軟剤,増量剤,防腐剤,吸湿剤などが配合される。のり付けの方法には,かせのり付け,1本のり付け,ビームのり付け,ボールのり付けなどがあり,大量生産にはビームのり付けが行われる。ビームのり付けはビームから引き出した経糸にのりを付け,乾燥後ワープビームに巻き取るもので,(a)のり付けした糸を加熱したシリンダーで乾燥するスラッシャーのり付機,(b)熱風乾燥のり付機,(c)その他各種の乾燥方法によるのり付機などがある。(4)機上げ ワープビームから経糸を引き出し(綾(あや)を取ってないものは綾を取る),ドロッパーおよび綜絖の目に1本ずつ通した後,数本まとめて筬羽へ通し(引込み,あるいは経(へ)通し),さらに織機が正常に運転できるようにする(機掛け)作業。経糸自動分離機あるいは自動綾取機,自動引込機が使用されるが,引込用具により手作業で行われる場合も多い。新しく設計した織物を製織する場合には必ず引込みを行う必要があるが,同じ織物を継続して作る場合には,古い経糸の後端と新しいワープビームの経糸とを1本ずつつなぎ合わせればよく,自動タイイングマシンが使用される。

シャットル内へセットする緯(よこ)管(コップ)を作るため木管に緯糸を巻く工程を管巻きという。シャットルを使用しない杼無(ひなし)織機では,チーズ,ボビンなどから直接緯糸を引き出して緯入れするので,この工程は不必要である。
織機
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百科事典マイペディア 「製織」の意味・わかりやすい解説

製織【せいしょく】

機織(きしょく)とも。織機によって経糸(たていと)と緯(よこ)糸を組み合わせ織物を作ること。製織準備の作業で経糸・緯糸が織機に仕掛けられ,織機は,経糸の開口,緯糸入れ,緯糸打ちの主動作と,経糸送り出し,布巻きの副動作を行って織布する。
→関連項目

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化学辞典 第2版 「製織」の解説

製織
セイショク
weaving

糸を用いて布を製造することをいう.基本的には必要とする織物の組織に応じて,たて糸を上下し,その間によこ糸を挿入し,交錯させ,二次元シート状の布を構成する工程からなる.この基本操作は古代からかわっていない.よこ糸挿入にシャットル(杼:ひ)を大部分用いているが,エネルギー損失が多く,騒音を発生し,高速化ができないので,積極的に道具を用いてよこ糸を挿入するもの,水または空気のジェット(噴流)によりよこ糸を送り込むものなどがしだいに増加し,高能率化されつつある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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