装・粧(読み)よそう

精選版 日本国語大辞典 「装・粧」の意味・読み・例文・類語

よそ・う よそふ【装・粧】

[1] 〘他ハ四〙
① 服装、用具などを整え身につける。身づくろいをする。身支度を整える。よそおう。
万葉(8C後)九・一七七七「君なくは何(な)ぞ身装餝(よそは)む匣(くしげ)なる黄楊(つげ)の小櫛も取らむとも思はず」
② 飾り整える。よそおう。
(イ) 用具などを飾り整える。装飾をほどこす。飾る。
書紀(720)皇極元年七月(岩崎本訓)「大寺の南の庭(おほは)に於て、仏菩薩の像(みかた)を四天王の像とを厳(ヨソヒ)て」
(ロ) 殿舎、座席などを整え設備する。しつらえる。
※万葉(8C後)二・一九九「吾が大君 皇子の御門を 神宮に 装束(よそひ)奉りて」
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「寝殿のすのこに御ましよそひて」
③ 船・車などを、出発や使用が可能なように飾り整える。出発の準備をする。
※万葉(8C後)二〇・四三三〇「難波律に余曾比(ヨソヒ)余曾比(ヨソヒ)て今日の日や出でてまからむ見る母なしに」
飲食物を整え、用意する。また、飲食物を器に整えて盛る。転じて、飲食物を器に盛る。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「おとど達興じ給て、『まづ此の粥すすりてん』とて、そへたる坏どもによそひて、皆参る」
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉四「『さあ』とわざと考へるふうをよそって」
[2] 〘他ハ下二〙
① (一)①に同じ。
今昔(1120頃か)三一「色々に装そへたる指貫姿の御前(さき)共、十余人前に火を燃し次(つづ)きたり」
② (一)②に同じ。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「みなみのひさしの、御ましよそへつるにしのかたに、御びゃうぶ・御几帳などたてさせ給て」

よそい よそひ【装・粧】

(動詞「よそう(装)」の連用形の名詞化)
[1] 〘名〙
衣服。装束。特に、整った服装。
※古事記(712)上・歌謡「赤玉は 緒さへ光れど 白玉の 君が余曾比(ヨソヒ)し 貴くありけり」
源氏(1001‐14頃)行幸「右大将の、さばかり重りかに由めくも、今日のよそひいとなまめきて」
② 飾り。装飾。
※書紀(720)雄略一四年四月(前田本訓)「時に密(しのひ)舎人を遣して、装餝(ヨソヒ)を視察(み)しむ」
③ 準備すること。したく。
※万葉(8C後)一四・三五二八「水鳥の立たむ与曾比(ヨソヒ)に妹のらに物いはず来にて思ひかねつも」
④ そのものが機能を果たすための付属品。装備。また、それをととのえること。
※源氏(1001‐14頃)明石「心みに、舟のよそひを設けて、まち侍りしに」
富士谷成章(ふじたになりあきら)の文法用語で、動詞・形容詞形容動詞などにあたる。
あゆひ抄(1773)おほむね上「名をもて物をことわり、装をもて事をさだめ、挿頭脚結をもてことばをたすく」
[2] 〘接尾〙
① 衣服・調度など、揃ったものを数えるのに用いる。そろい。
※書紀(720)天武朱鳥元年正月(北野本訓)「蓁揩(はりすり)の御衣三具(ヨソヒ)、錦袴二具」
② 器に盛った飲食物を数えるのに用いる。
浄瑠璃大職冠(1711頃)四「古歌にも奈良茶かや此の手盛りにて二よそい」

よそおい よそほひ【装・粧】

〘名〙 (動詞「よそおう(装)」の連用形の名詞化)
① 身につける服装、用具などを飾りととのえること。身づくろいすること。威儀をととのえること。また、そのようにした姿・様子。
※仏足石歌(753頃)「この御足跡(みあと)を廻りまつれば足跡主(あとぬし)の玉の与曾保比(ヨソホヒ)思ほゆるかも見る如もあるか」
※竹取(9C末‐10C初)「天人のよそほひしたる女」
② 飾りつけること。装飾を施すこと。また、その飾り・装飾や、その様子。
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)二「慈氏菩薩の像有り、金色の装(ヨソホヒ)厳しくして」
③ 格式のあるいでたち。また、付加されたいかめしい格式。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「さすがになにとなく所せき身のよそほひにて」
④ 人や物事の姿・様子。
(イ) 総合的・全体的にみた、人の姿。有様。風姿。
※書紀(720)神代下(兼方本訓)「時に此の神の容貌(かほかたち)、正に天稚彦が平生(いけりしとき)の儀(ヨソホヒ)に類(に)たり」
(ロ) 物事のおごそかな様子。また、大げさな有様。
※類従本堀河百首(1105‐06頃)雑「吉野なる大川水のよそほひは代々にも更に絶じとぞ思ふ〈隆源〉」
(ハ) 外側の様子。外観。外見。おもむき。
※歌謡・閑吟集(1518)「梨花一枝、雨を帯びたるよそほひの」
⑤ 準備すること。したくすること。
※平家(13C前)二「旅のよそほいこまごまと沙汰しをくられたり」

よそお・う よそほふ【装・粧】

〘他ワ五(ハ四)〙 (動詞「よそう(装)」の未然形に継続・反復の接尾語「ふ」の付いた「よそはふ」が変化したもの)
① =よそう(装)(一)①
※平家(13C前)八「ここに王公卿相、花の袂をよそほひ、玉のくつばみをならべ」
② =よそう(装)(一)②
※正法眼蔵(1231‐53)行持下「大舟をよそほふて、南海をへて広州にとづく」
③ 化粧を施す。また、美しく身なりを飾る。
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)松島「其気色、窅然(えうぜん)として美人の顔(かんばせ)を粧ふ」
④ 実際はそうでないのに、外見上はそのようなふりをする。いかにもそのように見せかける。よそう。
※小説奇言(1753)二「但不識賢弟昔年因甚如此粧束(〈注〉ヨソヲフ)」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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